天使が消えた街
The Face of an Angel


2014年/イギリス=イタリア=スペイン/カラー/101分/スコープサイズ/
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(初出:)

 

 

実話や現実と虚構や夢の多重構造が生み出す迷宮
ウィンターボトムが奏でる死者へのレクイエム

 

[ストーリー] 2011年、イタリア・トスカーナ州シエナの街は、ある裁判の話題で持ちきりだった。4年前にイギリス人留学生エリザベスが殺害され、世界的な関心を呼んだ事件の控訴審が始まろうとしているのだ。この事件の映画化をオファーされた気鋭の監督トーマス・ラングは、リサーチのために現地に乗り込むが、そこで彼が目の当たりにしたのは大衆向けに扇情的な報道を繰り返すメディアの実態だった。

 はたして被告のセクシーなアメリカ人留学生ジェシカは、本当にエリザベスを殺したのか。その真偽が不確かな状況のもと、制作上の迷いに苦しむトーマスは、天真爛漫な女子学生メラニーの励ましに心癒され、被害者エリザベスとその遺族に寄り添った映画を作ろうと決意する。やがてその試みは、離婚した妻との間で愛娘の親権を争っているトーマス自身の行き詰まった人生にも変化をもたらすのだった――。[プレスより]

 『イタリアは呼んでいる』のヒットも記憶に新しいマイケル・ウィンターボトム監督の新作です。その題材は、2007年にイタリアで起こり、世界の注目を集めたペルージャ英国人女子留学生殺人事件。ウィンターボトムは実話をそのまま映画化するのではなく、登場人物の名前や舞台となる街を変更し、トーマスという架空の主人公を創造し、独自の世界を構築しています。

 個人的には、IMDBの評価があまりにも低いのが以前から気になっていた作品でした。そういう評価をする人の気持ちもわからないではありませんが、筆者は気に入っています。

 レビューのテキストは準備中です。いろいろ書きたくなる作品ですが、たとえばウィンターボトムとイタリアの繋がりです。彼が以前にイタリアで撮った『ジェノヴァ(原題)』(08)では、ジェノヴァの迷路のような裏通りが登場する家族の内面を象徴していましたが、新作ではそれを発展させたようなアプローチを見ることができます。2作品は死と喪失というテーマでも深く結びついています。


◆スタッフ◆
 
監督   マイケル・ウィンターボトム
Michael Winterbottom
脚本 ポール・フィラガー
Paul Viragh
原作 バービー・ラッツァ・ナドー
Barbie Latza Nadeau
撮影 ヒューバート・タクザノウスキー
Hubert Taczanowski
編集 マーク・リチャードソン
Marc Richardson
音楽 ハリー・エスコット
Harry Escott
 
◆キャスト◆
 
トーマス・ラング   ダニエル・ブリュール
Daniel Bruhl
シモーン・フォード ケイト・ベッキンセイル
Kate Beckinsale
エドゥアルド ヴァレリオ・マスタンドレア
Valerio Mastandrea
メラニー カーラ・デルヴィーニュ
Cara Delevingne
ジェシカ・フラー ジュヌヴィエーヴ・ゴーント
Genevieve Gaunt
エリザベス・プライス サイ・ベネット
Sai Bennett
-
(配給:ブロードメディア・スタジオ)
 

 ウィンターボトムとは『グアンタナモ、僕達が見た真実』(06)、『マイティ・ハート/愛と絆』(07)でも組んでいるハリー・エスコットのサウンドトラックもとてもいいです。レクイエムを意識した曲調で、マイケル・ナイマンに通じるものもあります。サントラに興味のある方は、下の関連リンクでチェックしてください。


(upload:2015/07/12)
 
 
《関連リンク》
ハリー・エスコット 『天使が消えた街:OST』 レビュー ■
『イタリアは呼んでいる』 レビュー ■
『いとしきエブリデイ』 レビュー ■
『トリシュナ』 レビュー ■
マイケル・ウィンターボトム・インタビュー03 『トリシュナ』
【TIFF公式】
『キラー・インサイド・ミー』 レビュー ■
『ジェノヴァ(原題)』 レビュー ■
『マイティ・ハート/愛と絆』 レビュー ■
『グアンタナモ、僕たちが見た真実』 レビュー ■
『9 Songs』 レビュー ■
『CODE46』 レビュー ■
『イン・ディス・ワールド』 レビュー ■
マイケル・ウィンターボトム・インタビュー02 『いつまでも二人で』 ■
『ひかりのまち』 レビュー ■
『アイ ウォント ユー』 レビュー ■
『ウェルカム・トゥ・サラエボ』 レビュー ■
『GO NOW』 レビュー ■
『バタフライ・キス』 レビュー ■
マイケル・ウィンターボトム・インタビュー01 『バタフライ・キス』 ■

 
 
 
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