[ストーリー] 1980年代、ポーランド民主化へと大きく揺れ動いた時代、幼いマテウシュは知的障害と言われ、身体にも重度の障害があり、家族ともコミュニケーションがままならない。しかし、実際の彼は健常者と同じように悩む、ロマンチックな心の持ち主だった。
医師から“植物のような状態”と言われたマテウシュだったが、家族の愛情を受け多感な子供時代を過ごす。心から愛を注いでくれた父の突然の死――。しかし、父から教わった星空を見上げる歓びを忘れることはなかった。向かいのアパートに住む少女への淡い恋、日々の寂しさを忘れる共に過ごす時間、突然訪れる別れ。そして成長と共に家族から疎まれてゆく。ある日姉は結婚を期に、彼を病院に入れてしまう。憤りと不満で母や看護師にあたる日々だったが、美しい看護師マグダが現れ、マテウシュは彼女と心を通わせるようになってゆく――。[プレスより]
長編デビュー作『Drzazgi/Splinters(英題)』(08・未)で、ヒューストン国際映画祭シルバーレミー賞、ポーランド劇映画祭(現・グディニア映画祭)最優秀長編デビュー作品賞を受賞したマチェイ・ピェブシツア監督の長編第二作です。主人公マテウシュを演じているのは、パヴェウ・パヴリコフスキ監督の『イーダ』(13)に出演していたダヴィド・オグロドニクです。まさに迫真の演技です。
レビューのテキストは準備中です。とりあえず感想を書いておきます。
映画の冒頭には「この物語は実話に基づいている」という断りがあり、エンド・クレジットにはモデルとなった人物の画像も映し出されますが、実話を忠実に再現しようとするような作品ではありません。
この映画では、医師から“植物のような状態”と診断されたマテウシュの目から見た世界が描かれます。彼は話すことができませんが、映画では心の声を通して饒舌に語ります。そのマテウシュの眼差しには、社会をまったく異なる視点からとらえようとするピェブシツア監督の姿勢が反映されています。 |