ポーランド出身で、イギリスを拠点にTVドキュメンタリーでキャリアを積み上げてきたパヴェウ・パヴリコフスキ監督の長編劇映画デビュー作。セルゲイ・ボドロフJr.、アンナ・フリエル、ウラジミール・イーリン、ロバート・ネッパー共演。
主人公は、ビデオカメラを抱え、西側のメディアが興味を持ちそうな事件を求めてモスクワの街を彷徨う若者バディク。ある晩、バス火災の現場を映像に収めた彼は、西側のテレビの支局にそれを持ち込む。結局、売り込みは失敗に終わるが、彼はそこで出会ったイギリス人の女性プロデューサー、ヘレンに恋をしてしまう。バディクは彼女に会いたいがために特ダネを追い求める。そして、密着取材していたエキセントリックなナショナリストの政治家ヤボルスキが、狙撃される現場に居合わせ、事件を映像に収めるが――。
バディクとヘレンのロマンスやヤボルスキの妻の浮気など、かなり娯楽性を意識したドラマになっているが、メディアに対する視点には興味深いものがある。
ヤボルスキは、政治的な宣伝のためなら手段を選ばない。そして思惑がはずれ、テレビが何の役にも立たないと知ると、それを屋敷のバルコニーから投げ捨てる。どうしても決定的な瞬間がほしいバディクは、ビルの前の歩道に備えられたゴミ箱に爆発物を放り込み、事件を起こそうとするが、絡まったビデオテープを直そうとするうちに計画が狂う。そして、ゴミを漁っていたホームレスとケンタッキーフライドチキンの箱を奪い合うことになる。
そんな真実と嘘(あるいは本物と偽者)のせめぎ合いは、『ラスト・リゾート(原題)』(00)や『マイ・サマー・オブ・ラブ』(04)に引き継がれ、深みのあるドラマを生み出していくことになる。
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