ノースカロライナ出身のイラン系アメリカ人であるラミン・バーラニ監督にとって、“アメリカン・ドリーム”三部作の最終章になる作品です。移民を両親に持つバーラニは、この三部作で移民の日常や現実を独自のアプローチで掘り下げています。
第一弾『マン・プッシュ・カート(原題)』(05)では、パキスタンからの移民が、第二弾『チョップショップ〜クイーンズの少年』(07)では、ヒスパニックの姉弟が主人公になっていましたが、この第三弾『グッバイ ソロ』(08)では、セネガルからやって来た移民のタクシー運転手ソロと南部人の老人ウィリアムが主人公になります。
前二作の舞台はニューヨークでしたが、本作ではノースカロライナのウィンストン・セーラムに変わります。そこはバーラニ監督の生まれ故郷で、彼がよく知る世界といえます。
セネガル移民のソロは、メキシコ系の妻キエラと彼女の連れ子の娘アレックスとウィンストン・セーラムに暮らし、タクシー運転手として働いています。彼には旅客機のキャビンアテンダントになるという夢があり、勉強をつづけています。
ある日、ソロはタクシーに乗り込んだ老人ウィリアムからある取引を持ちかけられます。1000ドルを先払いするので、10日以内に山中にある強風で有名なブローイングロックまで連れて行ってほしいというのです。ソロは老人の希望が片道であることから、その目的を察し、期限の日まで老人の専属運転手になることを思い立ちます。できるだけ老人と過ごすことで、彼に生きる喜びを思い出させようとするのです。 |