ノースカロライナ出身のイラン系アメリカ人であるラミン・バーラニ監督にとって、“アメリカン・ドリーム”三部作の第一弾になる作品です。移民を両親に持つバーラニは、この三部作で移民の日常や現実を独自のアプローチで掘り下げています。
第一弾『マン・プッシュ・カート(原題)』(05)の主人公は、パキスタンからアメリカに渡り、ニューヨークに暮らすアーマドです。彼は、フード・カートを借りて、コーヒーとベーグルを売っています。映画では、夜明け前のマンハッタンのストリートを、重いフード・カートを引いていくアーマドの姿が繰り返し映し出されます。バーラニ監督は、シシュフォスの神話にインスパイアされたようですが、確かに反復される重労働はそれを想起させます。
アーマドは毎日、コーヒーやベーグルを買うニューヨーカーたちと顔を合わせ、挨拶を交わしますが、誰も彼のことを個人として見ているわけではありません。アーマドにも、同じパキスタン移民とのつきあいがないわけではありませんが、彼は自分を表に出そうとはしません。その理由は、ドラマのなかで徐々に明らかになっていきます。
ある日、ビジネスマンの客が親しげに語りかけてきます。彼はモハマドというパキスタン人で、ふたりは友人になります。モハマドは、生活が苦しいアーマドにアパートの模様替えの仕事を依頼します。そして、アーマドがパキスタンでは成功したロックスターで、CDも持っていることに気づきます。
同じ頃、アーマドは、スペインからやって来てニューススタンドで働く女性ノエミと親しく言葉を交わすようになります。そして、アーマドとモハマドとノエミの間で、この主人公の過去が明らかになり、そのことが彼の運命に影響を及ぼしていくことになります。
ちなみに、主人公の人物像は、彼を演じているアーマド・ラジヴィ(Armad Razivi)の経験がもとになっているようです。彼はパキスタン人のバーテンダーで、以前はフード・カートで働いていたということです。それだけに、ドラマは非常にリアルです。マーティン・スコセッシの『タクシードライバー』(76)と響き合う作品でもあります。
とりあえず印象を書きましたが、いずれレビューにまとめたいと思います。
▼ラミン・バーラニ監督最新作、アンドリュー・ガーフィールド、マイケル・シャノン、ローラ・ダーン、ノア・ロマックス、アルバート・ベイツ共演の『ドリーム ホーム 99%を操る男たち』(14)は、2016年1月30日(土)、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテほか全国順次ロードショー!。
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