ノースカロライナ出身のイラン系アメリカ人であるラミン・バーラニ監督にとって、“アメリカン・ドリーム”三部作の第二弾になる作品です。移民を両親に持つバーラニは、この三部作で移民の日常や現実を独自のアプローチで掘り下げています。
第一弾『マン・プッシュ・カート(原題)』(05)では、パキスタンからの移民が主人公になっていましたが、第二弾『チョップショップ〜クイーンズの少年』(07)では、ヒスパニックの姉弟が主人公になります。その舞台は、ニューヨークのクイーンズ、ニューヨーク・メッツの新球場シティ・フィールドのそば、ジャンクヤードが集まるウィレッツ・ポイントです。ヴェレナ・パラヴェルとJ・P・シニァデツキが監督したドキュメンタリー『ニューヨーク ジャンクヤード』(10)でも舞台になっていました。
学校にも通えない12歳の孤児アレハンドロは、ジャンクヤードに住み込みで働き、厳しい生活を送っています。やがて姉のイサマルもその狭い部屋で一緒に暮らすことになります。その姉がフード・トラックで働いていることを知ったアレハンドロは、中古のマイクロバスに目をつけ、それを購入してフード・トラックに改造し、姉とともにビジネスを始めようと考えます。
目標ができたアレハンドロはせっせと金をためますが、ある日、偶然、姉が売春している姿を目にし、激しいショックを受けて、自分の感情をコントロールすることができなくなっていきます。
この映画は、バーラニ監督が実際にウィレッツ・ポイントに生きる子供たちにインスパイアされた作品で、前作同様、社会の底辺に生きる移民の現実、そして彼らの複雑な内面が見事に炙り出されています。ダルデンヌ兄弟の『イゴールの約束』やケム・ナンの『源にふれろ』を思い出させるところもあります。 |