[ストーリー] 物語はFBIで誘拐事件を担当する捜査官ケイト・メイサーが、秘密裏に編成された特殊チームにスカウトされるところから始まる。チームに課せられたミッションは、アメリカ社会を蝕むメキシコの麻薬組織ソノラ・カルテルの壊滅。持ち前の正義感に駆られてチームに志願するケイトだったが、リーダーの特別捜査官グレイヴァー、謎めいたコロンビア人のコンサルタント、アレハンドロは、なぜか作戦の詳細を教えようとしない。
何もわからぬままメキシコのフアレスへ同行したケイトは、人が虫けらのように軽んじられる暴力が日常化した街のおぞましい実態と、作戦中に手荒な超法規的手段を駆使するチームの方針に戦慄を覚える。やがて法によって悪を裁く理想を打ち砕かれたケイトは、麻薬戦争の得体の知れない闇の奥深くに身を投じ、さらなる想像を絶する真実を目の当たりにするのだった――。[プレスより]
『渦』(00)、『ポリテクニック(原題)』(09)、『灼熱の魂』(10)、『プリズナーズ』(13)、『複製された男』(13)といった作品で注目を集めてきたカナダの異才ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の最新作です。“Sicario”という原題で筆者がすぐに思い出すのは、『ローマ環状線、めぐりゆく人生たち』(13)のジャンフランコ・ロージ監督の第2作『El Sicario, Room 164』(10)のことです。これは、メキシコの麻薬カルテルのヒットマンへのインタビューを収めたドキュメンタリーでした。この『ボーダーライン』でも、原題はメキシコの麻薬カルテルのヒットマンを意味しています。
FBI捜査官ケイト・メイサーをエミリー・ブラント、謎のコロンビア人アレハンドロをベニチオ・デル・トロ、特別捜査官マット・グレイヴァーをジョシュ・ブローリンが演じています。音楽を手がけたのは、『プリズナーズ』でもヴィルヌーヴと組んだアイスランドの作曲家/マルチインストゥルメンタリスト、ヨハン・ヨハンソン。重低音が異様な空気を醸し出しています。サントラの情報は、『ボーダーライン:オリジナル・サウンドトラック』でチェックしてください。
「ニューズウィーク日本版」の筆者コラム「映画の境界線」で本作を取り上げました。その記事をお読みになりたい方は以下のリンクからどうぞ。
● アメリカ本土を戦場化する苛烈なメキシコ麻薬「戦争」|『ボーダーライン』
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