『ビロウ・シー・レベル(原題)』(08)、『エル・シカリオ、ルーム 164(原題)』(10)につづくジャンフランコ・ロージ監督の長編第3作。ヴェネチア国際映画祭にて、ドキュメンタリーとして映画祭史上初の金獅子賞受賞。
[概要] 1日の車の交通量16万台、全長約70km、大都市ローマを取り巻く大動脈「環状線GRA」。その周辺には旅行者たちが知らない愛すべき人たちの暮らしがある。木の中の「音」世界を研究し続ける植物学者。ブルジョアを装い偽りの今を生きる没落貴人。不釣合いなモダンな建物に移り住みあてもなくお喋りしながら暮らす老紳士とその娘。事故現場で人命救助を行い、その合間を縫って年老いた母親の面倒をみる救急隊員。伝統を守りつつ後継者がいないことを憂うウナギ漁師。子守唄を口ずさむ両性具有の車上生活者。スポットライトを浴びることもなく懸命に生きる人々の人生に目を留めると、その風景の中に喜び、怒り、哀しみ、そして夢が見えてくる――。[プレスより]
ジャンフランコ・ロージ監督のドキュメンタリーは、入り口は小さいが、その世界に引き込まれるうちに想像力を刺激され、視野が広がっていく。
電気も水道もないカリフォルニアの砂漠地帯に、それぞれの事情で社会に背を向けた人々が流れてきて生まれたコミュニティの日常を映し出す長編デビュー作『Below Sea Level』。メキシコの麻薬カルテルの元殺し屋だった男の告白を収めた第二作『El sicario, Room 164』。ロージ監督は周縁に生きる人々と信頼関係を築き、彼らの自然体の姿をとらえ、告白を引き出す。そんな身近な距離感が、彼らが生きてきた社会や環境を想像させ、見えない背景を通して私たちとも繋がっているように思えてくる。
ヴェネチア映画祭で金獅子賞に輝いた新作『ローマ環状線、めぐりゆく人生たち』では、緻密な構成によって独特のスタイルにさらに際立つ。登場するのは、大都市ローマを取り巻く環状線近辺というまさに周縁に生きる人々だ。 |