[ストーリー] アメリカ国内の商業施設で市民15人の命が奪われる自爆テロ事件が発生。 犯人一味がメキシコ経由で不法入国したと睨んだ政府は、 国境地帯で密入国ビジネスを仕切る麻薬カルテルを混乱に陥れる任務を、 CIA工作員のマット・グレイヴァーに命じる。
それを受けてマットは、 カルテルへの復讐に燃える旧知の暗殺者アレハンドロに協力を要請。 麻薬王の娘イサベルを誘拐し、 カルテル同士の戦争を誘発しようと企てる。 しかしその極秘作戦は、 敵の奇襲やアメリカ政府の無慈悲な方針変更によって想定外の事態を招いてしまう。 メキシコの地で孤立を余儀なくされたアレハンドロは、 兵士としての任務と復讐心、そして人質として保護する少女の命の狭間で、 過酷なジレンマに直面していく――。
[以下、本作のレビューになります]
『ボーダーライン』の続編『ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ』では、メキシコの麻薬カルテル同士の内戦を引き起こすために、CIA特別捜査官マットと暗殺者アレハンドロが再び手を組む。
コロンビアのボゴタに暮らすアレハンドロの前に現れたマットが、「今回はルールなし。自由にやれ」と語ったように、彼らは手段を選ばない。マタモロス・カルテルの弁護士を白昼の路上で殺害し、今度は麻薬王カルロス・レイエスの娘イサベルを誘拐し、マタモロスの仕業に見せかける。だが、レイエスの息がかかったメキシコ警察の一団と壮絶な銃撃戦を繰り広げたことで、状況は一変し、アレハンドロとマットはそれぞれに窮地に立たされる。
この続編は、アクションがスケールアップしているだけでなく、人間ドラマとして新生面を切り拓いている。その鍵を握るのは、親と子の関係だ。
親子、あるいは親子を連想させるエピソードは、前作にも盛り込まれていた。マットの特殊チームの活動と並行するように、国境のメキシコ側の街ノガレスに暮らす警官シルビオとサッカー好きの息子の日常の断片が挿入され、終盤でシルビオとアレハンドロの運命が交錯する。作戦終了後、FBI捜査官ケイトの前にアレハンドロが現れ、作戦が合法的に行われたことを証明する書類にサインをさせる場面では、彼が「怯えると少女のようだな。殺された娘を思い出す」と語る。
そうしたエピソードで中心になっているのは親の視点だった。映画は、サッカーに興じるシルビオの息子が銃声を耳にする場面で終わり、少年が何らかの変貌を遂げることはない。これに対して続編では、子の視点が掘り下げられ、その変貌が描き出される。
本作には、前作のケイトに代わって、ミゲルとイサベルという新しいキャラクターが登場する。テキサス国境地帯にあるマッカレンに暮らし、中学に通う少年ミゲルは、マタモロス・カルテルに属する従兄に誘われ、カルテルで働くようになる。麻薬王の娘イサベルは、先述したようにマットのチームに誘拐され、状況が一変したことから、アレハンドロとともに過酷なサバイバルを余儀なくされていく。
そんなふたりの体験はまったく異なるように見えるが、実は重要な共通点がある。
ミゲルをめぐるドラマには、従兄との間でこんなやりとりがある。ミゲルが「マズいんだ。帰らないと親父が…」と言い出すと、従兄が「ふざけんな、ミゲル。お前には新しい親父ができたんだ。彼らに会ったら堂々としてろ。もう大人だろ?」と返答する。一方、イサベルは、髪を切り、カリーナを名乗り、彼女に父親役として雇われたように装うアレハンドロとともに国境を越えようとする。 |