エリザのために
Bacalaureat / Graduation Graduation (2016) on IMDb


2016年/ルーマニア=フランス=ベルギー/カラー/128分
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(初出:ニューズウィーク日本版「映画の境界線」2017年)

 

 

父親と娘の関係から浮かび上がるルーマニアの現在と未来
カンヌ国際映画祭・監督賞に輝くクリスティアン・ムンジウ最新作

 

[ストーリー] 医師ロメオには、イギリス留学を控える娘エリザがいる。彼には愛人がおり、家庭は決してうまくいっているとは言えない。ある朝、ロメオは車で娘を学校へ送っていくが、校内に入る手前で降ろし、彼女は徒歩で登校することに。しかし白昼人通りもあるなかで、エリザは暴漢に襲われてしまう。

 大事には至らなかったが、娘の動揺は大きく、留学を決める翌日の卒業試験に影響を及ぼしそうだ。これまで優秀な成績を収めてきたエリザは、何もなければ合格点を取り、ケンブリッジ大学で奨学生になれるはずだった。

 ロメオは娘の留学をかなえるべく、警察署長、副市長、試験官とツテとコネを駆使し、ある条件と交換に試験に合格させてくれるよう奔走する。しかしそれは決して正しいとは言えない行動で、ついに検察官が彼の元へやってくる――。[プレスより]

 『4ヶ月、3週と2日』(07)、『汚れなき祈り』(12)などでルーマニア・ニューウェーブを牽引するクリスティアン・ムンジウ監督の新作です。

 今回は、同じルーマニアのカリン・ペーター・ネッツアー監督の『私の、息子』(13)に通じるテーマを扱っています。『私の、息子』では、母親と息子の関係を通してルーマニアの現在と未来が描き出されましたが、本作では、父親と娘の関係を通してそれが描かれているといえます。

 父親ロメオを演じるのは、クリスティ・プイウ監督の『ラザレスク氏の最期』(05)や『私の、息子』(13)に出演していたアドリアン・ティティエニ。娘エリザ役は、ミヒャエル・ハネケ『白いリボン』(09)に出演していたマリア・ドラグシ(『白いリボン』公開時には、マリア=ヴィクトリア・ドラグスと紹介されていました)。『4ヶ月、3週と2日』(07)、コルネリウ・ポルンボユ監督の『ポリス、アジェクティヴ(英題)』(09)、『私の、息子』の他、ラデュ・ミヘイレアニュ監督の『オーケストラ!』(09)やポン・ジュノ監督の『スノーピアサー』(13)などにも出演しているヴラド・イヴァノフが、警察署長を演じています。

 ニューズウィーク日本版の筆者コラム「映画の境界線」で本作を取り上げました。記事をお読みになりたい方は以下のリンクからどうぞ。

ルーマニアの歪んだ現実を掘り下げる『エリザのために』


◆スタッフ◆
 
監督/脚本   クリスティアン・ムンジウ
Cristian Mungiu
撮影 トゥドル・ヴラディミール・パンドゥル
Tudor Vladimir Panduru
編集 ミルチェア・オルテアヌ
Mircea Olteanu
 
◆キャスト◆
 
ロメオ   アドリアン・ティティエニ
Adrian Titieni
エリザ マリア・ドラグシ
Maria-Victoria Dragus
マグダ リア・ブグナル
Lia Bugnar
サンドラ マリナ・マノヴィッチ
Malina Manovici
警察署長 ヴラド・イヴァノフ
Vlad Ivanov
試験委員会の委員長シェルバン ジェル・コルチャグ
Gelu Colceag
マリウス ラレシュ・アンドリチ
Rares Andrici
副市長ブライ ペトレ・チュボタル
Petre Ciubotaru
-
(配給:ファインフィルムズ)
 

 

《参照/引用文献》
『現代東欧史 多様性への回帰』ジョゼフ・ロスチャイルド●
羽場久■(さんずいに尾)子・水谷驍訳(共同通信社、1999年)

(upload:2016//)
 
 
《関連リンク》
クリスティアン・ムンジウ 『汚れなき祈り』 レビュー ■
クリスティアン・ムンジウ 『4ヶ月、3週と2日』 レビュー ■
カリン・ペーター・ネッツアー 『私の、息子』 レビュー ■
コルネリウ・ポルンボユ 『ポリス、アジェクティヴ』 レビュー ■
クリスティ・プイウ 『ラザレスク氏の最期』 レビュー ■
ミヒャエル・ハネケ 『白いリボン』 レビュー ■

 
 
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