リコリス・ピザ
Licorice Pizza


2021年/アメリカ/英語/カラー/134分/スコープサイズ
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(初出:)

 

 

1973年のLA郊外、サンフェルナンド・バレー
偶然に出会った15歳のゲイリーと25歳のアラナの恋愛遍歴

 

[Introduction] トム・クルーズら主演『マグノリア』でベルリン国際映画祭金熊賞、アダム・サンドラー主演『パンチドランク・ラブ』でカンヌ、ホアキン・フェニックス主演『ザ・マスター』でヴェネチア、ダニエル・デイ=ルイス主演『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』でベルリンと世界三大映画祭すべてで監督賞受賞の伝説を作り、常に世界中の映画ファンが新作を心待ちにしている天才監督ポール・トーマス・アンダーソン。最新作『リコリス・ピザ』はオリジナル脚本の完成度の高さ、細かな脇役に至るまで行き届いた演出が高く評価され、本年度アカデミー賞作品賞、監督賞、脚本賞にノミネートされたほか、世界中の映画賞を席巻している。

 舞台は1970年代のハリウッド近郊、サンフェルナンド・バレー。カメラマンアソシタントのアラナと高校生ゲイリーが偶然に出会い、すれ違い、歩み寄っていく恋模様を描き出す。主演は三姉妹バンド、ハイムの三女であるアラナ・ハイムとポール・トーマス・アンダーソン監督の盟友フィリップ・シーモア・ホフマンの息子であるクーパー・ホフマン。ともに本作で鮮烈な映画デビューを飾り、主演女優賞やブレイクスルー賞を総なめに! 脇を固める俳優も曲者揃いだ。ショーン・ペン、トム・ウェイツ、ブラッドリー・クーパー、ベニー・サフディとレジェンドが集結し、実在の人物をモデルにしたアクの強い登場人物を生き生きと演じている。音楽を手がけたのはレディオヘッドのジョニー・グリーンウッド。ポール・トーマス・アンダーソン監督とは本作で5作目のタッグとなる。(プレス参照)

[レビューは準備中です、以下、とりあえずのコメントです]

 ポール・トーマス・アンダーソンはサンフェルナンド・バレーで育った。長編デビュー作『ハードエイト』(96)につづく3作品、『ブギーナイツ』(97)、『マグノリア』(99)、『パンチドランク・ラブ』(02)では、サンフェルナンド・バレーを舞台にしている。その後の3作品『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』(07)、『ザ・マスター』(12)、『インヒアレント・ヴァイス』(14)は、時代背景は異なるが、いずれもカリフォルニアを舞台にしている。前作の『ファントム・スレッド』(17)の舞台はロンドンだったが、本作で再びサンフェルナンド・バレーに戻ってきたことになる。


◆スタッフ◆
 
監督/脚本/撮影/製作   ポール・トーマス・アンダーソン
Paul Thomas Anderson
撮影 マイケル・バウマン
Michael Bauman
編集 アンディ・ユルゲンセン
Andy Jurgensen
音楽 ジョニー・グリーンウッド
Jonny Greenwood
 
◆キャスト◆
 
アラナ・ケイン   アラナ・ハイム
Alana Haim
ゲイリー・バレンタイン クーパー・ホフマン
Cooper Hoffman
ジャック・ホールデン ショーン・ペン
Sean Penn
レックス・ブロウ トム・ウェイツ
Tom Waits
ジョン・ピーターズ ブラッドリー・クーパー
Bradley Cooper
ジョエル・ワックス ベニー・サフディ
Benny Safdie
-
(配給:ビターズ・エンド、パルコ)
 

 サンフェルナンド・バレーは戦後いち早く郊外化が進み、アメリカの夢の象徴になったが、荒廃するのも早かった。一方でこの地域は、ハリウッドをもじってバレーウッドと呼ばれた映画産業、ポルノ映画産業、テレビや音楽産業など、ショービジネスの世界に取り巻かれていた。だから、苦労することもなく、ちょっとしたきっかけで予想もしないチャンスに恵まれるようなことが起こる。しかし、チャンスをものにすることは、冷酷なシステムに取り込まれることも意味する。

 ということで、ショービジネスと結びついたドラマも少なくない。アンダーソンが実在のポルノ男優ジョン・ホームズにインスパイアされて作った『ブギーナイツ』では、高校を中退し、母親から負け犬呼ばわりされる若者エディが、皿洗いをしていたクラブでポルノ映画の監督ジャックにスカウトされ、スターになっていく。

 70年代に一世を風靡したガールズバンド“ランナウェイズ”を題材にしたフローリア・シジスモンディ監督の『ランナウェイズ』(10)は、サンフェルナンド・バレー出身で、バンドのヴォーカルだったシェリー・カーリーの自伝に基づいている。奔放で身勝手な母親と酒に溺れる父親という、壊れかけた家庭に暮らし、鬱屈した日々を送っていたシェリーは、クラブでやり手のプロデューサー、キム・フォーリーにスカウトされ、ランナウェイズが結成され、大きな注目を集めていく。

 実話に基づくポール・シュレイダー監督の『ボブ・クレイン 快楽を知ったTVスター』(02)では、サンフェルナンド・バレーに暮らし、60年代にラジオからテレビへと進出してスターになった主人公が、セックスにのめり込み、快楽に溺れていく。

 本作で、10歳年上のアラナに一目惚れする15歳のゲイリーは、子役としてショービジネスの世界で活躍していて、ウォーターベッドやピンボールでビジネスをはじめる。アラナが、ベテラン俳優のジャック・ホールデンや映画監督のレックス・ブラウと出会ったり、ゲイリーがアラナの運転するトラックで、映画プロデューサーのジョン・ピーターズの家にウォーターベッドを配達するなど、ショービズ界の人間がいろいろ登場する。

 

(upload:2022/04/28)
 
 
《関連リンク》
ポール・トーマス・アンダーソン 『インヒアレント・ヴァイス』 レビュー ■
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