[Introduction] イギリスの作家ロバート・ハリスが2017年に発表した歴史サスペンス小説『Munich』の映画化。主な舞台は、チェコスロバキアのズデーテン地方の帰属についてアドルフ・ヒトラー、ネヴィル・チェンバレンら英仏独伊の首脳が交渉を繰り広げた1938年9月のミュンヘン会談。主人公になるのは架空のふたりの人物、チェンバレンの私設秘書のヒュー・レガトとドイツの外交官ポール・フォン・ハートマン。かつてともに学んだふたりが、ナチの極秘情報をめぐってミュンヘンで再会することになる。
監督は『西という希望の地』や『カールと共に』のクリスティアン・シュヴォホー。ヒュー・レガトを、『はじまりへの旅』や『1917 命をかけた伝令』などのジョージ・マッケイ、ポール・フォン・ハートマンを『タイムトラベラーの系譜』シリーズや『コリーニ事件』『カールと共に』などのヤニス・ニーヴーナー(ニーヴナー)、ネヴィル・チェンバレンを『戦慄の絆』『ハウス・オブ・グッチ』などのジェレミー・アイアンズが演じる。その他に、『ありがとう、トニ・エルドマン』や『希望の灯り』のザンドラ・ヒュラー、『マイ ビューティフル ガーデン』のジェシカ・ブラウン・フィンドレイ、『汚れたダイアモンド』や『名もなき生涯』のアウグスト・ディールらが出演。
[Story] 第二次世界大戦勃発の前年にあたる1938年の秋。チェコスロバキアのズデーテン地方のドイツへの帰属を主張し、軍を動かそうとするアドルフ・ヒトラーに対し、イギリス首相ネヴィル・チェンバレンは平和的な解決を模索し、ミュンヘンでズデーテン地方の帰属について交渉する国際会議が開かれることになる。その頃、ドイツの外交官で反ヒトラーのグループに属するポール・フォン・ハートマンが、ナチの極秘文書を入手する。彼はそれをイギリス側に手渡すために、かつてオックスフォードでともに学んだヒュー・レガトを指名する。チェンバレンの私設秘書レガトは、ある出来事によってハートマンと絶縁状態になっていたため、スパイ活動の任務に戸惑いつつもミュンヘンに向かい、旧友との再会を果たすが、極秘文書をめぐって難しい判断を迫られていく。
[レビューは準備中です。とりあえず当時の背景を整理しておく]
ロバート・ハリスの原作で、ミュンヘン会談の背景がどのように描かれいるのか、読んでいないのでわからないが、たとえば、ドナルド・キャメロン・ワットの『第二次世界大戦はこうして始まった』には、以下のように綴られている。
「オーストリアが併合され、ロンドンは警戒心を強めた。だが、イギリスの内閣には、チェコスロヴァキアの前途を案じる思いなど少しもなかった。軍部の首脳は、一九三八年に戦争をすれば、イギリスが敗れる危険性がきわめて大きいと断言した」 |