アヌラーグ・カシャップ監督の『血の抗争/Gangs of Wassepur』(12)と『アグリー(原題)/Ugly』(13)で助監督とセカンド・ユニット監督を務めたニーラジ・ケーワンの長編デビュー作です。リテーシュ・バトラの『めぐり逢わせのお弁当』(13)と同じように、インドとフランスの合作になっています。
この映画では、ガンジス川のほとりにある聖地バラナシ(ワーラーナシー)を舞台に、異なるふたつの物語が並行して描かれ、最後に結びついていきます。バラナシには長い歴史を持つ火葬場がありますが、その火葬場も物語のなかで重要な位置を占め、生と死が交錯していくことになります。
一方の物語の主人公は、女子大生のデヴィ。彼女は大学で知り合った若者と安ホテルで密会しているところを、悪徳警官に踏み込まれる。そして写真を撮られたうえに、相手の若者が自殺してしまう。悪徳警官は、デヴィと彼女の父親を恐喝する。デヴィは罪悪感に苛まれ、自分を見失った父親は、孤児のジョンタと組んで、危険なギャンブルで金を調達しようとする。
もう一方の物語の主人公は、火葬を職業とする下位カーストの家庭に育ったディーパック。彼はエンジニアを目指して大学で学んでいる。そんなディーパックが、偶然出会った上位カーストの娘と恋に落ち、階層の壁を乗り越えようとするが――。
背景にあるのは伝統に支配された世界ですが、ディーパックと娘がfacebookを通して親しくなったり、悪徳警官がスキャンダルをネットに暴露すると脅迫するように、社会の変化も反映されています。どちらの物語も、ガンジス川や死と結びつけられ、閉鎖的な街や伝統に囚われたデヴィとディーパックのイニシエーション(通過儀礼)を描いたドラマと見ることもできます。
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