[ストーリー] 物語は少女の誘拐から始まる。10歳のカリは、母親のシャリニと義父で警察署長のボースと暮らしている。その日は日曜日で、カリは母親に頼み込んで、実父のラフルと過ごすことになる。車で娘を迎えにきたラフルは売れない俳優で、ドライブに出る前にエージェントのチャイタニャと会わなければならなかった。ところが、チャイタニャの部屋にいたわずかの間に、車で待っていたはずのカリが姿を消してしまう。
カリを探し回るラフルとチャイタニャは、近くにいた露天商が彼女のiPhoneを持っていることに気づき、追いかけるが、その男は路上に飛び出し即死してしまう。ふたりは警察に駆け込み、娘の義父が警察署長であることがわかると、本格的な捜査が始まる。その過程からはラフル、シャリニ、ボースを取り巻く人々の様々な思惑が露になり、複雑に絡み合っていく。
インド映画のニューウェーブを牽引するアヌラーグ・カシャップ監督のダーク・スリラーです。物語は曜日で区切られ、誘拐から始まる一週間のなかで、関係者たちのもうひとつの顔、金銭欲や出世欲、虚飾にとらわれた一面が暴き出されていきます。
物語は誘拐以前からダークなトーンが印象に残ります。孤独な母親シャリニはアルコールに依存し、冒頭で自殺をはかろうとします。警察署長の夫ボースは家庭では彼女を無視しながら、外では彼女の電話を盗聴しているような歪んだ人物です。そうした夫婦の状況は、シャリニの前夫ラフルとも無関係ではありません。ラフルとボースは大学の頃からの知り合いで、彼らの間にはシャリニをめぐる遺恨があります。
そのため、誘拐事件が起こったとき、ふたりはお互いに相手が事件を仕組んだのではないかと疑いを持ちます。その一方で、エージェントのチャイタニャは、事件を利用して身代金を得ようと画策し、シャリニの弟とその恋人なども絡んできます。 |