パンジャーブ 1984（原題）
Punjab 1984　

1984年の「ブルースター作戦」に始まる悲劇
急進派シク教徒と政府の対立に巻き込まれた母親と息子の運命は

　インド・パンジャーブ州カプールタラー出身のアヌラーグ・シン監督の新作です。オーストラリアで映画を学んだシンは、ボリウッドで活動したあとパンジャブ語映画界に活動の場を移し、パンジャブ語映画を牽引する映像作家のひとりになっています。

　物語は1984年6月、シク教の聖地アムリトサルの黄金寺院における銃撃戦、いわゆる「ブルースター作戦」から始まります。パンジャーブはインド、パキスタン独立時に分割され、多くのシク教徒が越境移動し、聖地アムリトサルがあるインド・パンジャーブ州に集まることになりました。その後、そこからシク教国家“カーリスターン（Khalistan）”の建設を目指す急進派が登場してくることになります。

　「ブルースター作戦」とは、黄金寺院を占拠したシク教急進派を排除するために、当時のインド首相インディラ・ガンディーの命令によって行なわれたインド軍による軍事作戦です。この作戦は対立と混乱を生み出すことになりました。

　この映画に登場するシヴァとその母親は、それまで平和に暮らしていましたが、シヴァの父親がブルースター作戦に巻き込まれ、消息がわからなくなります。父親を探しに行ったシヴァと母親は、父親がテロリストのリストに加えられ、命を奪われたことを知ります。

　さらに、悲しみから立ち直れないシヴァに災いが降りかかります。シヴァを目の敵にする地元の警察官が、彼を拘束し、拷問にかけます。シヴァは他のシク教徒と逃亡し、急進派のグループのメンバーとなり、テロ活動に身を投じます。その後は、息子を探し続ける母親と、葛藤を抱えるシヴァのドラマが並行して描かれていきます。