[ストーリー] 生まれつき耳が聞こえず、話もできないが、豊かな感情を眼差しと身ぶり・手ぶりだけで完璧に伝える心優しい青年バルフィ。そして、富も地位もある男性と結婚し、何不自由なく暮らしている美女シュルティと、家族からの愛情を得られずに育ち、自閉症のために施設に預けられているジルミル。まずバルフィが、ひと目でシュルティに恋をし、彼女が結婚してしまっても追いつづける。しかしその一方で、病に倒れた父親の手術費を捻出しなければならなくなったバルフィは、祖父の遺産を相続したジルミルの誘拐事件に巻き込まれ、彼女との間に絆を培っていく。
インド映画を牽引するアヌラーグ・バス監督の『バルフィ! 人生に唄えば』の主人公は、生まれつき耳が聞こえず、話もできないが、豊かな感情を眼差しや身ぶりで表現してしまう心優しい青年バルフィだ。物語は彼と二人の女性、富も地位もある男性と結婚したシュルティと、施設に預けられている自閉症のジルミルを軸に展開していく。
バルフィはシュルティに一目惚れし、彼女が結婚してしまっても想いつづける。しかしその一方で、父親の手術費を捻出すべく奔走するうちに、祖父の遺産を相続したジルミルの誘拐事件に巻き込まれ、彼女との間に絆を培っていく。
この映画には、世界各国の映画からの引用が散りばめられているが、あまり細部に気をとられると、作品のダイナミズムが半減しかねない。
バス監督は、サイレント映画におけるチャップリンやキートンが、世界を引っ掻きまわすトリックスターの魅力を放っていることを強く意識して、バルフィのキャラクターを作り上げている。そして、おびただしい引用もまた、そんなトリックスターとしてのバルフィを際立たせる役割を果たしているからだ。
さらにもうひとつ見逃せないのが、この監督が得意とする時間軸の操作だ。たとえば、出世作の『Murder(原題)』(04)では、まず警察に拘束された妻の告白から、彼女が不倫相手に裏切られ、殺人に至った経緯が浮かび上がる。しかしその後の夫の告白で真相が覆り、さらにどんでん返しが待ち受けている。 |