[ストーリー] インド・ムンバイでは、お昼時ともなると、ダッバーワーラー(弁当配達人)がオフィス街で慌しく弁当を配って歩く。その中のひとつ、主婦イラが夫の愛情を取り戻すために腕を振るった4段重ねのお弁当が、なぜか、早期退職を控えた男やもめのサージャンの元に届けられた。神様の悪戯か、天の啓示か。偶然の誤配送がめぐり逢わせた女と男。イラは空っぽで戻ってきたお弁当箱に歓び、サージャンは手料理の味に驚きを覚える。だが夫の反応はいつもと同じ。不審に思ったイラは、翌日のお弁当に手紙を忍ばせる――。[プレスより]
『めぐり逢わせのお弁当』が長編デビュー作となるリテーシュ・バトラ監督のプロフィールはなかなか興味深い。79年にムンバイに生まれ、中流家庭で育った彼は、アメリカに渡って大学で経済学を学び、経営コンサルタントとして働いた後で、まずニューヨーク大学の映画学校に学び、続いてサンダンス・インスティテュートに編入する。
そんな彼がこれまでにないインド映画を目指したことは、国際共同製作へのこだわりに表れている。この映画はインド、フランス、ドイツの合作で、中心的なスタッフもインド人ではない。『パラノーマル・アクティビティ2』(10)やドキュメンタリー『プロジェクト・ニム』(11)のマイケル・シモンズが撮影監督を、『The Aspern Papers(原題)』(10)や『Kiss of the Damned(原題)』(12)のジョン・F・ライオンズが編集を、『戦場でワルツを』、『さよなら、アドルフ』、『ディス/コネクト』のマックス・リヒターが音楽を手がけている。
当然、映画の中身の方も大きく異なる。これまでのインド映画であれば、主婦イラが夫のために作った弁当が、めったにない誤配送でやもめ暮らしのサージャンに届けられ、手紙のやりとりが始まったとしても、それはあくまで過程で、彼らがいかに対面し、関係を築いていくのかが見所となっていたことだろう。しかし、この映画では、手紙のやりとりこそが中心的なドラマになる。
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