クロッシング・ブリッジス(原題)
Crossing Bridges   Crossing Bridges
(2013) on IMDb


2013年/インド/カラー/103分/ヴィスタ
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(初出:)

 

 

インド辺境の少数民族が母語で作った初めての映画
ムンバイから帰郷した主人公がルーツに目覚めるとき

 

[ストーリー] ムンバイにあるIT企業でウェブ・デザインの仕事をしていた30代初頭のタシは、8年ぶりにアルナーチャル·プラデーシュ州の山奥にある故郷に戻ってくる。両親には仕事が順調であるかのように装っているが、実はレイオフにあっていた。彼は知人の弁護士に職探しを頼み、いい知らせがくればムンバイに戻るつもりでいた。

 ところが、ノルブやペマという地元の友人たちと再会し、小学校の非常勤の教師を務めて同僚のアニラに出会い、電波が繋がる場所を求めて山を登ったりするうちに、故郷の風土や文化を再発見していく。そんな彼は、やがてムンバイからいい知らせが届いたとき、人生の決断を迫られる。

 インドのアルナーチャル·プラデーシュ州に暮らす“Shertukpen”という少数民族のことを知る人は少ないのではないでしょうか。筆者も知識がなく、どう発音するのかもわかりません。『クロッシング・ブリッジス(原題)/Crossing Bridges』(13)の監督Sange Dorjee Thongdokは、そのShertukpenのコミュニティの出身で、本作はShertukpen語で撮られた初めての映画になります。

 筆者が読んだ監督のインタビューによれば、Shertukpenの文化には、口承の伝統があり、物語や歌が口承によって伝えられてきましたが、彼は村の老人たちがそんな歌を忘れつつあることに気づきました。そして、子供の頃からビデオ・カメラで部族の物語を記録してきた彼は、自分たちの物語を守り、外の世界の人々に伝えるのに映画が有効なメディアだと考え、コルカタの映画学校で映画を学び、Shertukpenのコミュニティからアマチュアの人々をキャスティングし、本作を完成させました。


◆スタッフ◆
 
監督/脚本   サンゲ・ドージー・ソンドク
Sange Dorjee Thongdok
撮影 Pooja S Gupte
編集 Sanglap Bhowmik
音楽 Anjo John
 
◆キャスト◆
 
Tashi   Phuntsu Khrime
Anila Anshu Jamsenpa
Father Guru Tsering
Mother Pema Chom Thungon
Norbu Kesang Tsering
Pema Karma Dorjee Thongdok
Rinchin Neetu Tsering
  Prem Dorjee
  Pemo Khrimey
  Tenzin Khechog
  Anshu Jamsempa
-
(配給:)
 

  レビューのテキストは準備中です。とりあえず簡単に感想を。物語に特に真新しさはありませんが、作り手の魂が込められていることがわかり、心が洗われます。山好きの筆者は、風景だけでも引き込まれます。主人公タシがルーツを再発見していく物語と、タシと女性教師アニラの交流、森で美しい女に出会った男たちが姿を消し、魂を抜かれてしまう民話というふたつのサブプロットがうまく結びつけられ、深みのあるドラマになっています。映画に盛り込まれた民族の舞踏も印象に残ります。

 ペマ役のKarma Dorjee Thongdokは音楽もやっているようです。

 

(upload:2015/06/15)
 
 
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