[ストーリー] ムンバイにあるIT企業でウェブ・デザインの仕事をしていた30代初頭のタシは、8年ぶりにアルナーチャル·プラデーシュ州の山奥にある故郷に戻ってくる。両親には仕事が順調であるかのように装っているが、実はレイオフにあっていた。彼は知人の弁護士に職探しを頼み、いい知らせがくればムンバイに戻るつもりでいた。
ところが、ノルブやペマという地元の友人たちと再会し、小学校の非常勤の教師を務めて同僚のアニラに出会い、電波が繋がる場所を求めて山を登ったりするうちに、故郷の風土や文化を再発見していく。そんな彼は、やがてムンバイからいい知らせが届いたとき、人生の決断を迫られる。
インドのアルナーチャル·プラデーシュ州に暮らす“Shertukpen”という少数民族のことを知る人は少ないのではないでしょうか。筆者も知識がなく、どう発音するのかもわかりません。『クロッシング・ブリッジス(原題)/Crossing Bridges』(13)の監督Sange Dorjee Thongdokは、そのShertukpenのコミュニティの出身で、本作はShertukpen語で撮られた初めての映画になります。
筆者が読んだ監督のインタビューによれば、Shertukpenの文化には、口承の伝統があり、物語や歌が口承によって伝えられてきましたが、彼は村の老人たちがそんな歌を忘れつつあることに気づきました。そして、子供の頃からビデオ・カメラで部族の物語を記録してきた彼は、自分たちの物語を守り、外の世界の人々に伝えるのに映画が有効なメディアだと考え、コルカタの映画学校で映画を学び、Shertukpenのコミュニティからアマチュアの人々をキャスティングし、本作を完成させました。 |