[ストーリー] 19世紀前半のイギリス。もともと老齢で即位したウィリアム国王は、いつ倒れてもおかしくない状態だった。国王の姪で王位継承者のヴィクトリアの周辺では、様々な人物が、まだ若く未熟な彼女を操り、権力を手に入れようと画策していた。
夫の死後、個人秘書ジョン・コンロイと深い仲にあったヴィクトリアの母ケント公爵夫人は、彼の言いなりになって、娘に摂政政治を認めさせようとする。ヴィクトリアの叔父でベルギー国王のレオポルドは、なんとかイギリスからの援助を獲得しようと、甥のアルバートをドイツから呼び寄せ、ヴィクトリアのもとに送り込む。現首相のメルバーン卿は、ヴィクトリアに対するコンロイの影響力を排除するために、巧みにヴィクトリアに取り入る。
監督は、カナダのケベック州を拠点に活動する異才ジャン=マルク・ヴァレ。ヴィクトリアを、『マイ・サマー・オブ・ラブ』(04)で注目され、『ブラダを着た悪魔』(06)、『チャーリー・ウィルソンズ・ウォオー』(07)、『サンシャイン・クリーニング』(08)などに出演しているエミリー・ブラントが演じています。レビューのテキストは準備中ですが、簡単に感想を。
ジャン=マルク・ヴァレの監督作は、ケベックを背景として選び、自ら脚本を手がけ、主にフランス語で演じられ、個人のアイデンティティや他者との関係を独自の視点から掘り下げる『C.R.A.Z.Y.』(05)や『カフェ・ド・ロール』(11)の系譜と、自身のオリジナルな企画ではなく、監督としてクレジットされる本作や『ダラス・バイヤーズクラブ』(13)の系譜に大きく分けることができます。
これは重要な境界ではありますが、後者に属する作品だからといって、個性が失われているわけではなく、独自の視点がしっかりと埋め込まれています。『ダラス・バイヤーズクラブ』では、カウボーイ文化というホモソーシャルな連帯関係を基盤とする集団に属していた主人公ロン・ウッドルーフが、HIVに感染していると判明したとたんに、集団から排除され、自己を見つめ直すことになります。これはヴァレ監督が強い関心を持つ状況だといえます。 |