[ストーリー] ケルドは、非常に寡黙で感情表現が下手な中年の配管工だ。そんな夫と暮らす妻リーは、退屈な結婚生活にうんざりし、離婚を決意して出ていってしまう。独り身となったケルドは、料理もできないため、近所の中華料理屋に通い出し、次第に店の主である中国人のフォンと親しくなる。
ケルドは、店の厨房の水道管が壊れたときには喜んで修繕し、フォンとの間に信頼関係が生まれる。フォンはそんなケルドに思いもよらない頼みごとをする。フォンは、彼を頼って中国からやって来た妹リンがデンマークに留まれるように、結婚相手を探していた。
ケルドは最初は断るが、離婚による財産分与で金に困っていたため、思い切って引き受ける。リン本人はそんな結婚を望んでいたわけではない。二人は言葉も通じず、文化もまったく異なり、あくまで形式的な結婚ではあったが、次第に相手に惹かれるようになり――。
『ハッダーの世界』(03)で長編デビューしたヘンリク・ルーベン・ゲンツ監督の長編第2作です。脚本は、のちに『パーフェクト・センス』(11)や『ファイティング・ダディ 怒りの除雪車』(14)などで知られるようになるキム・フップス・オーカソン(Kim Fupz Aakeson)が手がけています。
ゲンツ監督は、孤独な(あるいは孤立する)主人公が、異なる世界に踏み出し、新たな関係を築いていくような物語を、様々な設定で描く作家ですが、この作品も例外ではありません。彼はこれにつづく第3作『テリブリー・ハッピー(英題)』(08)でさらに大きな成功を収めることになります。
この『チャイナマン(英題)』は、彼の監督作のなかでは、ストーリー的にも、映像的にも比較的ストレートな作品といえますが、ケルド役のビャーネ・ヘンリクセン(『セレブレーション』、『偽りなき者』)、リン役のヴィヴィアン・ウー(『宋家の三姉妹』、『ディナーラッシュ』)、フォン役のリン・クン・ウーがいい味を出していて、ドラマに引き込まれます。また、『ドライヴ』や『オンリー・ゴッド』の監督ニコラス・ウィンディング・レフンが医師役でカメオ出演しています。
中国語も中華料理もわからないケルドは、毎日、店を訪れてはメニューを番号順にオーダーし、フォンと親しくなっていきます。口下手なケルドにとっては、リンと言葉が通じないことが、逆に他者を理解していく機会になるともいえます。 |