チャイナマン(英題)
Kinamand / Chinaman Chinaman (2005) on IMDb


2005年/デンマーク=中国/カラー/88分/
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(初出:)

 

 

妻に見捨てられた寡黙な配管工が
中国人との偽装結婚の果てに見出すもの

 

[ストーリー] ケルドは、非常に寡黙で感情表現が下手な中年の配管工だ。そんな夫と暮らす妻リーは、退屈な結婚生活にうんざりし、離婚を決意して出ていってしまう。独り身となったケルドは、料理もできないため、近所の中華料理屋に通い出し、次第に店の主である中国人のフォンと親しくなる。

 ケルドは、店の厨房の水道管が壊れたときには喜んで修繕し、フォンとの間に信頼関係が生まれる。フォンはそんなケルドに思いもよらない頼みごとをする。フォンは、彼を頼って中国からやって来た妹リンがデンマークに留まれるように、結婚相手を探していた。

 ケルドは最初は断るが、離婚による財産分与で金に困っていたため、思い切って引き受ける。リン本人はそんな結婚を望んでいたわけではない。二人は言葉も通じず、文化もまったく異なり、あくまで形式的な結婚ではあったが、次第に相手に惹かれるようになり――。

 『ハッダーの世界』(03)で長編デビューしたヘンリク・ルーベン・ゲンツ監督の長編第2作です。脚本は、のちに『パーフェクト・センス』(11)や『ファイティング・ダディ 怒りの除雪車』(14)などで知られるようになるキム・フップス・オーカソン(Kim Fupz Aakeson)が手がけています。

 ゲンツ監督は、孤独な(あるいは孤立する)主人公が、異なる世界に踏み出し、新たな関係を築いていくような物語を、様々な設定で描く作家ですが、この作品も例外ではありません。彼はこれにつづく第3作『テリブリー・ハッピー(英題)』(08)でさらに大きな成功を収めることになります。

 この『チャイナマン(英題)』は、彼の監督作のなかでは、ストーリー的にも、映像的にも比較的ストレートな作品といえますが、ケルド役のビャーネ・ヘンリクセン(『セレブレーション』『偽りなき者』)、リン役のヴィヴィアン・ウー(『宋家の三姉妹』、『ディナーラッシュ』)、フォン役のリン・クン・ウーがいい味を出していて、ドラマに引き込まれます。また、『ドライヴ』や『オンリー・ゴッド』の監督ニコラス・ウィンディング・レフンが医師役でカメオ出演しています。

 中国語も中華料理もわからないケルドは、毎日、店を訪れてはメニューを番号順にオーダーし、フォンと親しくなっていきます。口下手なケルドにとっては、リンと言葉が通じないことが、逆に他者を理解していく機会になるともいえます。


◆スタッフ◆
 
監督   ヘンリク・ルーベン・ゲンツ
Henrik Ruben Genz
脚本 キム・フップス・オーカソン
Kim Fupz Aakeson
撮影 Sebastian Blenkov
編集 Mette Zeruneith
音楽 ギスレ・クヴェルンダック
Gisle Kverndokk
 
◆キャスト◆
 
Keld   ビャーネ・ヘンリクセン
Bjarne Henriksen
Ling ヴィヴィアン・ウー
Vivian Wu
Feng リン・クン・ウー
Lin Kun Wu
Michael パウ・ヘンリクセン
Paw Henriksen
Rie Charlotte Fich
Zhang Chapper Kim
Doctor ニコラス・ウィンディング・レフン
Nicolas Winding Refn
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(配給:)
 

 ちなみに、オーストリアのウルリヒ・ザイドル監督はドキュメンタリー『Die letzten Manner/The Last Real Men』(94)で、ヨーロッパ人男性とアジア人女性との関係をまったく異なる観点から描いていますが、比較してみるとなかなか興味深いものがあります。


(upload:2015/06/21)
 
 
《関連リンク》
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