[Introduction] イタリアの政界を背景にした風刺劇『ローマに消えた男』(13)で、権力の寓話を軽やかなユーモアを交えて描いたロベルト・アンドー監督。フェデリコ・フェリーニやフランチェスコ・ロージなど名だたる映画監督の助手を務めてきた彼が新作の題材に選んだのは、"物質主義vs精神主義"の構図を核に捉えた知的でスタイリッシュな異色ミステリーだ。キャストには国際的な俳優が顔をそろえた。主役の修道士サルスには、『グレート・ビューティー/追憶のローマ』(13)のトニ・セルヴィッロ。物語のキーパーソンとなるロシェ理事訳には、『八日目』(96)でカンヌ国際映画祭の男優賞に輝いたフランスの名優、ダニエル・オートゥイユ。『ワンダーウーマン』(17)のコニー・ニールセン、『潜水服は蝶の夢を見る』(07)のマリ=ジョゼ・クローズ、『ソウル・キッチン』(11)のモーリッツ・ブライプトロイ、『神々と男たち』(11)のランベール・ウィルソンら、国際色豊かな顔ぶれによる競演も見所。(プレス参照)
[Story] ドイツ、ハイリゲンダムの空港に、イタリア人修道士、ロベルト・サルスが降り立つ。彼は迎えの車に乗り、ある国際的な会合が開かれる場に向かう──。バルト海に面したリゾート地の高級ホテルで開かれる予定のG8の財務相会議。そこでは世界市場に多大な影響を与える再編成の決定がくだされようとしている。それは貧富の差を残酷なまでに拡大し、特に発展途上国の経済に大きな打撃を与えかねないものだ。会議の前夜、天才的なエコノミストとして知られる国際通貨基金(IMF)のダニエル・ロシェ専務理事は、8ヵ国の財務大臣と、ロックスター、絵本作家、修道士の異色な3人のゲストを招待して自身の誕生日を祝う夕食会を催す。会食後、サルスはロシェから告解がしたいと告げられる。翌朝、ビニール袋をかぶったロシェの死体が発見される。自殺か、他殺か?殺人の容疑者として真っ先に浮上したサルスは、戒律に従って沈黙を続ける。間近に迫るマスコミ向けの記者会見。ロシェの告解の内容をめぐり、権力者たちのパワーゲームに巻き込まれたサルスは自らの思いを語り始める。果たして謎の死の真相は?そしてロシェがサルスに託したものとは──。
ニューズウィーク日本版の筆者コラム「映画の境界線」で本作を取り上げています。その記事をお読みになりたい方は以下のリンクからどうぞ。
● G8財務相会議の朝、IMF理事が死体で発見される|『修道士は沈黙する』 |