[ストーリー] 2005年、ヘヴィメタルをこよなく愛する金融トレーダー・マイケルは、格付けの高い不動産抵当証券の何千もの事例を調べていく中で、返済の見込みの少ない住宅ローンを含む金融商品(サブプライム・ローン)は、数年以内にデフォルト(債務不履行)に陥る可能性があることに気づく。だが、その予測はウォール街からも投資家からも相手にされずにいた。そんな中、マイケルは「クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)」という金融取引に目をつけ、サブプライム・ローンの価値が暴落した時に巨額の保険金を手に出来る契約を投資銀行と結ぶ。
同じ頃、ウォール街の若き銀行家ジャレドは、マイケルの戦略を察知し、信用力の低い多くの低所得者に頭金なしで住宅ローンを組ませている大手銀行に対して不信感を募らせているヘッジファンド・マネージャーのマークにCDSに大金を投じるべきだと勧める。
また、この住宅バブルを好機と捉え、ウォール街で地位を築こうと野心に燃える若き投資家ジェイミーとチャーリーの2人は、勝負をかけるにあたり、今は一線を退いた伝説の銀行家・ベンに相談を持ちかける。ベンは自らのコネクションを使って彼らのウォール街への挑戦を後押しすることを決意する。
マイケル、マーク、ジャレド、ベンの大勝負が始まる――。[プレスより引用]
映画『マネーボール』(11)の原作者でもあるベストセラー作家マイケル・ルイスのノンフィクション『世紀の空売り 世界経済の破綻に賭けた男たち』に基づく物語です。監督はコメディで異彩を放ってきたアダム・マッケイ。
経済を題材にした物語を映画にするのは簡単ではありませんが、原作のポイントを押さえ、独自のユーモアを盛り込み、巧みに映画的な表現と話術に置き換えられています。それは、登場人物たちの名前にも表れています。クリスチャン・ベール演じるトレーダーは、原作と同じマイケル・バーリですが、スティーブ・カレル演じるヘッジファンド・マネージャーは、スティーヴ・アイズマンからマーク・バウムに、ライアン・ゴズリング演じるトレーダーは、グレッグ・リップマンからジャレド・ベネットに、ブラッド・ピット演じる投資家は、ベン・ホケットからベン・リカートに変更されています。
これは、人物の背景を省略したり、独自の肉付けを施しているためだと思います。実際、映画のマーク・バウムは、原作のアイズマンとは異なる魅力を放っています。『フォックスキャッチャー』(14)につづいてスティーブ・カレルの個性が際立っています。
「ニューズウィーク日本版」の筆者コラム「映画の境界線」で本作を取り上げています。記事をお読みになりたい方は以下のリンクからどうぞ。
● ウォール街を出しぬいた4人の男たちの実話|『マネー・ショート 華麗なる大逆転』 |