[ストーリー] シヴァーニーはムンバイ警察犯罪課のタフな女性刑事で、夫で医師のビクラムと姪のミーラと暮らしている。彼女は、ミーラと仲のよい孤児のピャーリを家族同然のように思っていたが、そのピャーリが突然、行方不明になる。
捜査を始めたシヴァーニーは、ピャーリが人身売買と麻薬密売を仕切るマフィアに誘拐されたことを突き止める。そこで、人身売買の拠点であるデリーに乗り込み、地元警察と協力して麻薬密売のルートからマフィアの黒幕に迫ろうとするが、その先には落とし穴が待ち受けている。
この数年、インドでは女性映画が目立ってきていますが、プラディープ・サルカール監督のこの新作もその潮流を感じさせる内容になっています。
筆者はスジョイ・ゴーシュ監督の『女神は二度微笑む』(12)のレビューで、主演のヴィディヤー・バーランと女性映画の関係について書きました。ヴィディヤーは以前から実力派として認知されていましたが、女性を中心に据えるインド映画のトレンドに乗ってさらに輝きを放ち、ギャラも急上昇しました。
そのきっかけになったのは、99年にモデルのジェシカ・ラールが有力政治家の息子に射殺された事件に基づく『ノー・ワン・キルド・ジェシカ(原題)』(11)で、ヴィディヤーはジェシカの妹サブリナに扮し、殺された姉のために孤軍奮闘します。そして、『ダーティ・ピクチャー(原題)』(11)では、80年代に南インドで一世を風靡したセクシー女優シルク・スミタに扮し、既成の価値観に揺さぶりをかける挑発的で官能的な魅力を放ち、『女神は二度微笑む』では、ヒンドゥー教の戦いの女神ドゥルガーと結びつけられる強烈なヒロイン像を体現しています。
なぜそんなことをここで振り返ったのかというと、『ノー・ワン・キルド・ジェシカ』には、ジャーナリストのミーラというもうひとりのヒロインが登場し、彼女を本作の主演であるラーニー・ムカルジーが演じていたからです。そのミーラは、権力を使って罪を逃れようとする実行犯を追いつめていきます。それだけに、ヴィディヤーと同じようにラーニーも女性映画のトレンドに乗るのではないかと思っていたのですが、本作ではまさにそんな強いヒロイン像の魅力が存分に発揮されています。 |