グロリアス 世界を動かした女たち
The Glorias


2020年/アメリカ/英語/カラー&モノクロ/147分/ヴィスタサイズ/5.1ch
line
(初出:)

 

 

インド留学、プレイボーイ・クラブ潜入、「Ms.」創刊、先住民女性との共闘
”オン・ザ・ロード”を体現するフェミニスト、グロリア・スタイネムの軌跡

 

[Introduction] 女性解放運動のパイオニアとして活躍したグロリア・スタイネムと活動家の仲間たちとの物語。スタイネム自身がその生き様を綴った『My Life on the Road』が原作。幼年期から壮年期に至るスタイネムを4人の女優が演じる。青年期のグロリアを演じたのは、『リリーのすべて』でアカデミー賞助演女優賞に輝いたアリシア・ヴィキャンデル。40代以降のバトンを受け継いだのが、『アリスのままで』で同賞の主演女優賞を受賞したジュリアン・ムーア。スタイネムの父親レオを、『ゲティ家の身代金』のティモシー・ハットン、スタイネムの活動家の盟友たち、ドロシー・P・ヒューズを『アンテベラム』ジャネール・モネイ、フロレンス・ケネディを『グローリー/明日への行進』ロレイン・トゥーサント、ベラ・アブツーグを『フォー・ザ・ボーイズ』のベット・ミドラー、ウィルマ・マンキラーを『The Cherokee Word for Water』のキンバリー・ゲレロが演じる。監督は『タイタス』『フリーダ』ジュリー・テイモア。(プレス参照)

[Story] 大学生でインドに留学をしたグロリアは、男性から虐げられている女性たちの悲惨な経験を聞き、帰国後はジャーナリストとして働き始める。だが、社会的なテーマを希望しても、女だからとファッションや恋愛のコラムしか任されない。そこでグロリアは高級クラブの「プレイボーイ・クラブ」に自らバニーガールとして潜入。その内幕を記事にして暴き、女性を商品として売り物にする実態を告発する。更にはTVの対談番組に出演するなど、徐々に女性解放運動の活動家として知られ始める。40代を迎えた頃は仲間たちと共に女性主体の雑誌「Ms.」を創刊する。これは、未婚女性=Missや既婚女性=Mrs.とは別に、どんな女性にも使える新しい敬称=Ms.として、全米各地の女性に受け入れられていく──。

[以下、短いコメントになります]

 本作の原作は、グロリア・スタイネム自身がその生き様を綴った『My Life on the Road』。彼女の人生は、まさに”オン・ザ・ロード”という言葉に集約することができる。スタイネムの父親レオは、儲け話を求めて各地を転々とするような生活を送ったようだ。成長したスタイネムは、奨学金でインドに留学するが、学校で学ぶというよりは、インドの女性たちの現実に触れるための旅に近い。帰国した彼女は、ジャーナリストとして働きだすものの、自分が書きたい本を出すことができないので、自分の主張を女性たちに直接伝えるために各地を転々とする生活を送る。


◆スタッフ◆
 
監督/脚本   ジュリー・テイモア
Julie Taymor
脚本 サラ・ルール
Sarah Ruhl
原作 グロリア・スタイネム
Gloria Steinem
撮影 ロドリゴ・プリエト
Rodrigo Prieto
編集 サビーヌ・ホフマン
Sabine Hoffman
音楽 エリオット・ゴールデンサール
Elliot Goldenthal
 
◆キャスト◆
 
グロリア・スタイネム(壮年期)   ジュリアン・ムーア
Julianne Moore
グロリア・スタイネム(青年期) アリシア・ヴィキャンデル
Alicia Vikander
レオ・スタイネム ティモシー・ハットン
Timothy Hutton
ドロシー・P・ヒューズ ジャネール・モネイ
Janelle Monae
ベラ・アブツーグ ベット・ミドラー
Bette Midler
フロレンス・ケネディ ロレイン・トゥーサント
Lorraine Toussaint
ウィルマ・マンキラー キンバリー・ゲレロ
Kimberly Guerrero
-
(配給:キノシネマ)
 

 監督のテイモアは、スタイネムの人生を象徴する”オン・ザ・ロード”を、彼女らしい自由な発想で表現している。本作では、スタイネムを幼少期から壮年期まで4人の女優が演じ、そのヒロインがバスや列車で移動する場面が頻繁に挿入される。しかも、青年期と壮年期の彼女が乗り物に並んで座り、過去について語り合ったり、4人がバスに乗り合わせることもある。

 その活動が注目されるようになったスタイネムが、「ニューズウィーク」の表紙になるのを頑なに拒むように、彼女は、女性解放運動のパイオニアではあっても、必ずしも率先して先頭に立つタイプではない。そこには人種も関わっている。彼女と行動をともにする活動家は、ドロシー・P・ヒューズやフロレンス・ケネディが黒人、ベラ・アブツーグがユダヤ人、ウィルマ・マンキラーが先住民で、彼女のような白人が運動の顔になるべきではないという考えも見える。スタイネムは、オン・ザ・ロードに象徴される活動によって、行動する女性たちを結びつけ、気づいてみるとその中心にいるといってもいい。

 ちなみに、ウィルマ・マンキラーは、チェロキー・ネーションで女性として初めて首長に選出された活動家だが、彼女をキンバリー・ゲレロが演じていることには注目しておくべきだろう。というのも、ゲレロは、ウィルマ・マンキラーを主人公にした2013年製作の映画『The Cherokee Word for Water』でマンキラーを演じていて、本作に再びマンキラーとして登場しているからだ。

 

(upload:2022/05/02)
 
 
《関連リンク》
ジュリー・テイモア 『フリーダ』 レビュー ■
ジュリー・テイモア 『タイタス』 レビュー ■
映画に見るオーストラリアの女性問題
――レイプカルチャーと揺れるフェミニズム
■
ロヘナ・ゲラ 『あなたの名前を呼べたなら』 レビュー ■
アイヴァン・アイル『ソニ』レビュー ■

 
 
amazon.comへ●
 
ご意見はこちらへ master@crisscross.jp