ゴーン・ガール
Gone Girl  Gone Girl
(2014) on IMDb


2014年/アメリカ/カラー/149分/スコープサイズ/ドルビー
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(初出:「CDジャーナル」2014年12月号)

 

 

現実が揺らぐ世界のなかで
“リアル”を自在に演出し現実を捩じ曲げる

 

[ストーリー] 結婚5周年の記念日。誰もが羨むような幸せな結婚生活を送っていたニックとエイミーの夫妻の日常が突然破綻する。エイミーが突然姿を消したのだ。部屋は荒らされ、キッチンには争った跡が残る。警察は他殺と失踪の両方の可能性を探るが、当然のごとくニックにも捜査の手が及ぶ。暴走するメディアによって夫婦の隠された素性が暴かれ、ニックは窮地に立たされてしまう。エイミー失踪事件は、アメリカにおける家庭内犯罪を象徴する事件のように見えたが――。[プレスより]

 ギリアン・フリンのベストセラー『ゴーン・ガール』を映画化したデヴィッド・フィンチャー監督の新作は、ミズーリ州の郊外で幸せな生活を送っているかに見えるニックとエイミーの夫妻に異変が起こるところから始まる。結婚5周年の記念日にエイミーが突然姿を消す。室内には争ったような形跡や血痕があり、ニックには確かなアリバイがない。しかも警察の捜査によって彼に不利な状況証拠が次々と見つかる。

 フリンの原作にはフィンチャーの想像力を刺激する要素がふんだんに盛り込まれている。なかでも筆者が注目したいのが、ニックが社会に対して感じていることだ。現代人はみな世界の驚異といえるものをテレビや映画ですでに見尽くしている。しかも映像や音響の効果を駆使した間接的な体験の方が印象に残る。もはや本物の方が負けている。そしてテレビや映画やネットとともに育った自分たちも、もはや現実の人間なのかどうか定かではない。

 ニックが感じる現実の揺らぎはフィンチャーのテーマでもある。『ゲーム』に登場する実業家は、死の瀬戸際まで追いつめられることでトラウマから解放される。だが、現実を超越するそのリアルな体験は、企業によって提供されたものだった。『ファイト・クラブ』の主人公はリアルな幻想にとらわれ、気づいたときには消費社会にテロを仕掛けようとしている。


◆スタッフ◆
 
監督   デヴィッド・フィンチャー
Joel Hopkins
原作/脚本 ギリアン・フリン
Gillian Flynn
撮影 ジェフ・クローネンウェス
Jeff Cronenweth
編集 カーク・バクスター
Kirk Baxter
音楽 トレント・レズナー&アッティカス・ロス
Trent Reznor & Atticus Ross
 
◆キャスト◆
 
ニック・ダン   ベン・アフレック
Ben Affleck
エイミー・ダン ロザムンド・パイク
Rosamund Pike
デジー・コリンズ ニール・パトリック・ハリス
Neil Patrick Harris
ターナー・ボルト タイラー・ペリー
Tyler Perry
マーゴット・ダン キャリー・クーン
Carrie Coon
ロンダ・ボニー刑事 キム・ディケンズ
Kim Dickens
ジム・ギルビン刑事 パトリック・フィジット
Patrick Fugit
アンディ エミリー・ラタコウスキー
Emily Ratajkowski
エレン・アボット ミッシー・パイル
Missi Pyle
-
(配給:20世紀フォックス映画)
 

 そんな現実の揺らぎを異なる視点から見るなら、リアルを自在に演出することで現実を思い通りに捩じ曲げられることにもなる。『ゴーン・ガール』のエイミーにはそれがわかっている。幼い頃から人気絵本のモデルとして注目されてきた彼女は、一人歩きするリアルと現実の狭間で生きてきたともいえるからだ。そして、失踪したエイミーとニックの水面下の戦いは、フィンチャーの原点に結びついていく。

 『エイリアン3』では、ヒロインの体内にエイリアンの幼生が埋め込まれることによって、外的な闘争の物語が、内的な恐怖と葛藤、犠牲の物語へと書き換えられた。『セブン』では、キリスト教の七つの大罪をモチーフにすることで、凶悪犯を追う刑事が、逆に凶悪犯によって内面に大罪という敵を埋め込まれ、壮絶な葛藤を強いられる。そして、『ゴーン・ガール』の衝撃的な結末からも、そんな図式と葛藤が浮かび上がってくることになるのだ。

《参照/引用文献》
『ゴーン・ガール』 ギリアン・フリン ●
中谷友紀子訳(小学館、2013年)

(upload:2014/12/21)
 
 
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