[ストーリー] 天才画家ゴヤが描いた2枚の肖像画――天使のように清らかで美しい少女イネスと、威厳に満ちた神父ロレンソ。肖像画が完璧な出来栄えで完成したその時、2人の運命はゴヤでさえ予想しなかった道をたどり始める。まさか、違う世界に生きる2人が、危険な愛に踏み込んでしまうとは――。
時は18世紀から19世紀初め、内外の動乱に揺れるスペイン。ゴヤはカルロス4世の宮廷画家に任命される。王妃からも気に入られ、芸術家の最高位に上りつめたゴヤだが、一方で貧しい人々を描き続け、権力や社会を批判する絵画や版画を制作していた。彼にとって絵筆は、人間の真実を見つめ、嘘や不正を暴く武器なのだ。ある日突然、ゴヤにとってはミューズのような存在であったイネスが、無実の罪で囚われてしまう。彼女を救おうとしたゴヤが見た“真実”とは――?[プレスより]
巨匠ミロス・フォアマンの新作は、ゴヤの伝記映画でもなければ、史実に基づく歴史ものとも違う。ゴヤは、肖像画を描いた男女の数奇な運命の証人となる。
裕福な商人の娘で、ゴヤのミューズだったイネスは、カトリック教会の異端審問所からユダヤ教徒の疑いをかけられ、とらわれの身となる。ゴヤはロレンソ神父にイネスの解放を願うが、神父は彼女の美しさに魅了され、道を踏み外す。やがて彼らは、スペインを揺さぶる激しい動乱に巻き込まれていく。
異端審問、フランス革命、ナポレオンの台頭。ゴヤはまさしく激動の時代を生きた。そんな画家の目を通して時代をダイナミックに描き出そうとする作品が出てきても不思議はないが、このアイデアは実際には簡単ではないだろう。
ゴヤの視点を明確にするために絵画に頼りすぎればあまり映画的ではなくなる。画家の独自の視点をしっかりと確立できなければ、史実に基づく歴史ものになるし、単にゴヤ本人を掘り下げれば伝記映画と違いがなくなる。 |