サウルの息子
Saul Fia / Son of Saul


2015年/ハンガリー/カラー/107分/スタンダード/
line
(初出:「ニューズウィーク日本版」2016年1月8日更新)

 

 

「脱人間化の極限」に抵抗するアウシュヴィッツの
ゾンダーコマンドの姿に深く心を揺さぶられる

 

[ストーリー] 舞台は1944年10月のアウシュヴィッツ=ビルケナウ収容所。主人公のサウル・アウスランダーは、ハンガリー系のユダヤ人で、ゾンダーコマンドとして働いている。ゾンダーコマンドとは、ナチスが選抜し、わずか数か月の延命と引き換えに、同胞であるユダヤ人の死体処理に従事する特殊部隊のことである。

 サウルの衣服の背にはゾンダーコマンドの証しである禍々しい大きな赤い×印が付けられている。サウルたちの誘導で、数多くの老若男女のユダヤ人たちが服を脱がされ、全裸で次々にガス室へと追いやられていく。

 無慈悲なナチスがユダヤ人たちの遺体を“部品”と呼ぶような、人間の尊厳が根絶やしにされたおぞましい収容所の世界で、未来を閉ざされたサウルに微かな変化が現れるのは、ガス室で生き残った息子とおぼしき少年を目撃した時からである。ナチスの軍医に少年はすぐさま殺害され、検死室に安置されるが、サウルは、その遺体を解剖室から持ち出してしまう。そして、なんとかラビ(ユダヤ教の聖職者)を捜し出し、ユダヤ教の教義にのっとって手厚く埋葬しようとする。[プレスより引用]

 2015年のカンヌ国際映画祭でグランプリに輝いたハンガリー出身のネメシュ・ラースロー監督の長編デビュー作です。

 「ニューズウィーク日本版」の筆者コラム「映画の境界線」で本作を取り上げました。その記事をお読みになりたい方は以下のリンクからどうぞ。

「脱人間化の極限」に抵抗するアウシュヴィッツのゾンダーコマンドの姿に深く心を揺さぶられる|『サウルの息子』


◆スタッフ◆
 
監督/脚本   ネメシュ・ラースロー
Nemes Laszlo
脚本 クララ・ロワイエ
Clara Royer
撮影 マーチャーシュ・エルデーイ
Matyas Erdely
編集 マチュー・タポニエ
Matthieu Taponier
音楽 メリシュ・ラースロー
Melis Laszlo
音響 ザーニ・タマーシュ
Zanyi Tamas
 
◆キャスト◆
 
サウル   ルーリグ・ゲーザ
Rohrig Geza
アブラハム モルナール・レヴェンテ
Molnar Levente
ビーダーマン ユルス・レチン
Urs Rechn
顎鬚の男 トッド・シャルモン
Todd Charmont
医者 ジョーテール・シャーンドル
Zsoter Sandor
ヒルシュ アミタイ・ケダー
Amitai Kedar
ゾンダーコマンドのラビ イエジィ・ヴォルチャク
Jerzy Walczak
-
(配給:ファインフィルムズ)
 

 

《参照/引用文献》
『マクドナルド化する社会』ジョージ・リッツア●
正岡寛司監訳(早稲田大学出版部、1999年)
『私はガス室の「特殊任務」をしていた――知られざるアウシュヴィッツの悪夢』
シュロモ・ヴェネツィア●

鳥取絹子訳(河出書房新社、2008年)

(upload:2016/01/08)
 
 
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