キングダム 見えざる敵
The Kingdom


2007年/アメリカ/カラー/110分/スコープサイズ/ドルビーデジタルDTS・SDDS
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(初出:47NEWS花まるシネマ2007年10月9日更新、若干の加筆)

 

 

石油をめぐるアメリカとサウジの関係を背景に
テロと復讐だけでなく、家族の関係と未来を見つめる

 

 1996年6月、サウジアラビアのアメリカ軍関連施設で爆弾テロが発生し、19人のアメリカ人が死亡し、数百人が負傷した。そのホバル・タワー爆破事件のニュースに閃きを得たピーター・バーグ監督は、十年かけて構想を膨らませ、同じサウジのリヤドで2003年に起きた爆破事件の要素も加味して、独自の物語を作り上げた。

 サウジアラビアの首都リヤドにある石油会社の外国人居住区で自爆テロが発生し、死者が100人を越える惨事となる。このテロで同僚を亡くした4人のFBI捜査官たちは、サウジ大使を巧みに丸め込み、犯人に迫るべく5日間という期限つきでサウジに乗り込む。

 しかし、捜査は容易ではない。映画の冒頭描かれるように、サウジとアメリカは石油をめぐって特殊な関係にある。このオープニングは非常によくできている。1930年代の油田の発見から始まり、ケネディ、ニクソン、サウジの王族、サダム・フセイン、父ブッシュ、ビンラディンなどの実写映像が巧みに編集され、歴史的な背景が明確にされている。

 それだけに捜査官たちはアメリカとアラブの双方から圧力をかけられる。しかしそれらをなんとかかわし、アラブ人の大佐と部下の軍曹という協力者を得る。

 彼らがたどり着いたテロリストのアジトで繰り広げられるクライマックスの死闘は壮絶だが、もちろんこれはアクションだけの映画ではない。見逃せないのは、登場人物たちと未来を担う世代との関係だ。

 この映画は、FBI捜査官のリーダーが、授業参観で息子を見守る場面から始まる。サウジで捜査官たちに協力する大佐にも、テロの首謀者にも、同じように息子や孫などの家族がいる。ドラマでは、そんな関係が細やかに描き出されている。そして、次の世代が登場人物たちから何を引き継ぐのかによって、未来が決まることを示唆している。


◆スタッフ◆
 
監督   ピーター・バーグ
Peter Berg
脚本 マシュー・マイケル・カーナハン
Matthew Michael Carnahan
製作 マイケル・マン
Michael Mann
撮影 マウロ・フィオーレ
Mauro Fiore
編集 ケヴィン・ステット、コルビー・パーカーJr.
Kevin Stitt, Colby Parker Jr.
音楽 ダニー・エルフマン
Danny Elfman
 
◆キャスト◆
 
ロナルド・フルーリー   ジェイミー・フォックス
Jamie Foxx
ジャネット・メイズ クリス・クーパー
Chris Cooper
グランド・サイクス ジェニファー・ガーナー
Jennifer Garner
アダム・レヴィット ジェイソン・ベイトマン
Jason Bateman
アル・ガージー大佐 アシュラフ・バルフム
Ashraf Narhom
ハイサム軍曹 アリ・スリマン
Ali Suliman
デーモン・シュミット米大使館主席公使 ジェレミー・ピヴェン
Jeremy Piven
ギデオン・ヤング司法長官 ダニー・ヒューストン
Danny Huston
ロバート・グレースFBI長官 リチャード・ジェンキンス
Richard Jenkins
フラン カイル・チャンドラー
Kyle Chandler
エレイン・フラワー記者 フランシス・フィッシャー
Frances Fisher
-
(配給:UIP映画)
 

※映画の出発点になったホバル・タワー爆破事件については、何冊かの本で読んだ記憶があるのですが、すぐに思い出されるのは、ローレンス・ライトが9・11に至る長い道のりを膨大な資料と綿密な取材に基づいて描いた『倒壊する巨塔:アルカイダと「9.11」への道』です。事件そのものの記述は多いとはいえませんが、サウジアラビアとアメリカの密接な関係が詳細に記述されていますので、参考になるのではないかと思います。


(upload:2014/01/14)
 
 
《関連リンク》
ローレンス・ライト 『倒壊する巨塔:アルカイダと「9.11」への道』 レビュー ■
キャスリン・ビグロー 『ハート・ロッカー』 レビュー ■
ポール・ハギス 『告発のとき』 レビュー ■
ケン・ローチ 『ルート・アイリッシュ』 レビュー ■
ポール・グリーングラス 『グリーン・ゾーン』 レビュー ■
リチャード・フラナガン 『姿なきテロリスト』 レビュー ■

 
 
 
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