1996年6月、サウジアラビアのアメリカ軍関連施設で爆弾テロが発生し、19人のアメリカ人が死亡し、数百人が負傷した。そのホバル・タワー爆破事件のニュースに閃きを得たピーター・バーグ監督は、十年かけて構想を膨らませ、同じサウジのリヤドで2003年に起きた爆破事件の要素も加味して、独自の物語を作り上げた。
サウジアラビアの首都リヤドにある石油会社の外国人居住区で自爆テロが発生し、死者が100人を越える惨事となる。このテロで同僚を亡くした4人のFBI捜査官たちは、サウジ大使を巧みに丸め込み、犯人に迫るべく5日間という期限つきでサウジに乗り込む。
しかし、捜査は容易ではない。映画の冒頭描かれるように、サウジとアメリカは石油をめぐって特殊な関係にある。このオープニングは非常によくできている。1930年代の油田の発見から始まり、ケネディ、ニクソン、サウジの王族、サダム・フセイン、父ブッシュ、ビンラディンなどの実写映像が巧みに編集され、歴史的な背景が明確にされている。
それだけに捜査官たちはアメリカとアラブの双方から圧力をかけられる。しかしそれらをなんとかかわし、アラブ人の大佐と部下の軍曹という協力者を得る。
彼らがたどり着いたテロリストのアジトで繰り広げられるクライマックスの死闘は壮絶だが、もちろんこれはアクションだけの映画ではない。見逃せないのは、登場人物たちと未来を担う世代との関係だ。
この映画は、FBI捜査官のリーダーが、授業参観で息子を見守る場面から始まる。サウジで捜査官たちに協力する大佐にも、テロの首謀者にも、同じように息子や孫などの家族がいる。ドラマでは、そんな関係が細やかに描き出されている。そして、次の世代が登場人物たちから何を引き継ぐのかによって、未来が決まることを示唆している。 |