[Introduction] 昨年のカンヌ国際映画祭で、名だたる批評家を驚かせ、芸術的貢献を認められるフランス映画高等技術委員会賞を受賞した本作。監督は、ロシア演劇界の鬼才で映画監督としても世界が注目するキリル・セレブレンニコフ。2017年に国からの演劇予算を横領したと疑いをかけられ自宅軟禁状態とな り、軟禁という不条理な状況下で本作の脚本を書いたという。 原作は、ロシアでセンセーションを巻き起こしたアレクセイ・サリニコフによるベストセラー小説。ソヴィエト崩壊後のロシアの都市エカテリンブルクで、インフルエンザが流行する中、ペトロフは高熱にうなされる。妄想と現実の間を行ったり来たりするうちに、次第にその妄想は、まだ国がソヴィエトだった子供時代の記憶へと回帰する…。ペトロフを、セレブレンニコフの前作『LETO -レト-』にも出演していたセミョーン・セルジン、ペトロフの元妻ペトロワを、『ツバル』『ルナ・パパ』『グッバイ、レーニン!』のチュルパン・ハマートヴァ(ハマートワ)、ソヴィエト時代のエピソードに登場するマリーナを、『ロシアン・スナイパー』のユリア・ペレシルドが演じている。(プレス参照)
[Story] 2004年のロシア、エカテリンブルクの街。インフルエンザが流行する中、高熱を出したペ トロフは車の運転もできず、トロリーバスに乗り込む。すると、そこはまるで狂人ばかりの世界のよう。ペトロフは乗客の声に誘われるように、政治家たちを銃殺したり、妄想と現実を行ったり来 たり。そこへ友人のイーゴリがやってきて、ペトロフをトロリーバスから強引に降ろすと、霊柩車の中での酒盛りへ。次にイーゴリは、知人の哲学者ヴィーチャの家に押しかけ、さらに三人で酒を飲む。やがて熱と酔いで朦朧としたペトロフは、まだ国がソヴィエトだった子供時代のヨールカ祭りの記憶へと回帰して行く。 一方、ペトロフの離婚した妻ペトロワは、自分が働く図書館の客にうんざりしていた。家に帰れば、息子が 熱を出している。自分もインフルエンザにかかったかもしれない。そして息子の熱はどんどんと高くなり……。
ニューズウィーク日本版の筆者コラム「映画の境界線」で本作を取り上げています。その記事をお読みになりたい方は以下のリンクからどうぞ。
● 現代ロシアの病、妄想か現実か......|『インフル病みのペトロフ家』 |