[ストーリー] 第二次世界大戦終結直後の時期。ネリーは、顔に大怪我を負いながらも強制収容所から生還。親友のレネとともにドイツに戻り、顔の修復手術を受ける。レネは、パレスチナに建設されるユダヤ人国家へ2人で移住する計画を立てているが、ネリーの願いは夫ジョニーを見つけ出し過去を取り戻すこと。
顔の傷が癒える頃、ネリーはついにジョニーと再会するが、妻は収容所で亡くなったと思い込んでいるジョニーは、容貌の変わった彼女を妻とは気づかない。そして、亡くなった妻になりすまし遺産を山分けしようとネリーに持ちかける――。[プレス参照]
『東ベルリンから来た女』(12)につづくクリスティアン・ペッツォルト監督の新作です。前作に主演したニーナ・ホスとロナルト・ツェアフェルトが再び共演しています。
筆者は、ペッツォルト作品の魅力は、独特のねじれ方をした主人公たちの関係だと思っていますが、『イェリフォ(原題)/Jerichow』(08)や『東ベルリンから来た女』では、独特というよりも、正攻法に近いものになってきているように感じていました。しかしこの新作では、『ヴォルフスブルク(原題)』(03)、『幻影』(05)、『イェラ』(07)などに見られたねじれがさらに研ぎ澄まされた感じがして、非常にペッツォルトらしい作品になっていると思いました。
[以下、本作のレビューになります]
近作では少し正攻法に近づいた気がしないでもないが、ドイツの異才クリスティアン・ペッツォルトの作品では、主人公たちのねじれた関係が鍵を握る。
『ヴォルフスブルク(原題)』(03)では、轢き逃げで息子を奪われた母親が、そうとは知らずに犯人の男と親密な関係になっていく。『幻影』(05)では、89年にベルリンで誘拐された娘をずっと探し続けるフランス人の母親とベルリンの孤児院で暮らす少女が、互いに引き寄せられていく。『イェラ』(07)では、夫と別れ、旧東ドイツの地方都市からハノーファーに飛び出したヒロインが、秘書として能力を発揮するかに見えるが、彼女の現実は上司と元夫の狭間で揺らいでいく。 |