ジ・アザー・ウーマン(原題)
The Other Woman  The Other Woman
(2014) on IMDb


2014年/アメリカ/カラー/109分/スコープサイズ/ドルビーデジタル
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(初出:)

 

 

女性同士のホモソーシャルな連帯が可能にする復讐

 

[ストーリー] ニューヨークの大手弁護士事務所で働くカーリーは、ある日、イケメンのビジネスマン、マークと恋に落ちる。その数ヵ月後、彼女はマークを父親に紹介しようとするが、彼は自宅の水回りのトラブルで家政婦が困っていることを理由に帰宅してしまう。そこで彼女も協力しようと彼の自宅を訪ねるが、そこにいたのは家政婦ではなく彼の妻ケイトだった。

 もはやマークのことなど思い出したくもないカーリーだったが、なぜかケイトが彼女に付きまとうようになり、相談に乗っているうちに友だちになってしまう。カーリーがケイトに付き合って仕方なくマークの尾行をはじめると、ほかにも20代の愛人アンバーがいることが発覚。そこでふたりはアンバーに事情を打ち明け、3人でマークに復讐する計画をたてる。

 ニック・カサヴェテス監督の父親で、インディペンデント映画の父といわれるジョン・カサヴェテスは、『オープニング・ナイト』(79)の製作中に資金難に陥り、家を抵当に入れようとした。それを知った妻で女優のジーナ・ローランズは、「ああ、ジョン、家はだめ、家はだめよ」と嘆いたという。

 筆者が2009年に『私の中のあなた』(09)のプロモーションで来日したニック・カサヴェテスにインタビューしたとき、彼は次回作についてこのように語っていた。「次に着手しようとしている作品は難しいので、もしかすると家を抵当に入れることになるかもしれない。いずれにしても私がやりたいのは型を破ることなんだ」。

 その新作『イエロー』では、重い過去を背負う臨時教師のメアリーが、様々な妄想の世界に逃避することで、厳しい現実との折り合いをつけようとする。妄想世界の表現はまさに自由奔放で、型破りな作品になっていた。そして、『イエロー』が東京国際映画祭で上映されたときに来日したニックに再びインタビューしたら、彼は「実際に私の家は抵当に入っているよ」と語っていた。


◆スタッフ◆
 
監督   ニック・カサヴェテス
Nick Cassavetes
脚本 メリッサ・スタック
Melissa Stack
撮影 ロベール・フレイス
Robert Fraisse
編集 ジム・フリン、アラン・ハイム
Jim Flynn, Alan Heim
音楽 アーロン・ジグマン
Aaron Zigman
 
◆キャスト◆
 
カーリー   キャメロン・ディアス
Cameron Diaz
ケイト・キング レスリー・マン
Leslie Mann
マーク・キング ニコライ・コスター=ワルドー
Nikolaj Coster-Waldau
フランク ドン・ジョンソン
Don Johnson
アンバー ケイト・アプトン
Kate Apton
フィル テイラー・キニー
Taylor Kinney
リディア ニッキー・ミナージュ
Nicki Minaj
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(配給:)
 

 『ジ・アザー・ウーマン(原題)』は、その『イエロー』につづくニックの新作だ。前作で思い切り冒険したので、今度はある程度、集客が見込める作品を作る必要がある。ただし、ラブコメディとはいっても、必ずしも職人に徹しているわけではない。ニックは前作『イエロー』について以下のように語っていた。

「新作で描きたかったのは、今日の女性が、そのタイプに関係なく、どういうことを考えているのかということだ。私はひとりの観客として、昨今の映画に描かれている女性像は、100パーセント本来の姿ではないと感じていたので、本当の女性の姿というものを描きたいと思った」

 そしてこの新作にも、そんな女性への関心が引き継がれている。意外な展開から生まれる女性同士のホモソーシャルな連帯関係が面白い。その意外な展開の鍵を握るのは妻のケイトだが、夫の愛人にすり寄る彼女の行動は決して強引なだけではなく、現実味もある。気づいてみると身近な存在は夫の友人ばかりで、相談相手が見つからないということは実際あり得るのではないだろうか。

 ちなみに、『オブリビオン』『MAMA』『おやすみなさいを言いたくて』『真夜中のゆりかご』などで売り出し中のニコライ・コスター=ワルドーが、彼女たちに復讐されてさらけだすかなり惨めな姿もちょっとした見所になっている。


(upload:2015/04/19)
 
 
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