インディーズ映画の先駆者である故ジョン・カサヴェテスを父に、大女優ジーナ・ローランズを母に持つ監督ニック・カサヴェテス。彼の作品では、人生の岐路に立たされた主人公たちが、本当の自由のために困難な道を選択していく。そんなドラマには監督の人生観が反映されているように思える。
「言われてみるとそうかもしれないが、特に意識しているわけではない。人生は複雑で困難なものなので、主人公には十分に考え、適切な選択をしてほしい。私はストーリーテラーとしていつも主人公に恋をしている。だからこそ自分が彼らの立場だったら同じ選択をしたいと思っている」
ニックの新作『私の中のあなた』では、母親のサラと白血病の娘ケイトが選択を迫られる。どんな犠牲を払ってもケイトを救おうとするサラは、娘が生き続ける未来を見つめ、ケイトは、未来よりもいまを自分らしく生きようとする。
「親というのは子供が病気になったらひとつのことしか考えられない。周囲から何を言われても、絶対に大丈夫だと思いたい。ケイトには家族を守るという責任がないし、重病であることを認め、現状を把握している。正しいのはケイトの方だが、サラは母親として娘に何が正しいのかを示さなければならない。そこが複雑なところだ。私が病気の子供であればケイトのようにありたいし、親であればサラのようにありたいと思う」
初監督作品『ミルドレッド』が日本で公開されたとき、プレスにはニックのこんな言葉が引用されていた。「ジョンは私に本質的なことを教えてくれたのです。他人の言いなりにならず、自分自身を守り抜く。自由というものは、日々闘って勝ち取るものだ」。いまもその姿勢に変わりはないのか。
「あれから15年経っている。また『ミルドレッド』や『シーズ・ソー・ラヴリー』のような映画を作ればいいという人もいるが、私は常に違うものに興味を持ち変化する。芸術や個人主義の本質はふたつのカテゴリーに分けられる。ひとつは探求することで、もうひとつは洗練させていくことだが、私は探求しつづけることが好きなんだ。もちろん私の作品はどれも完璧だなどとは思わないが、真摯な姿勢で真理を探求しているとは思っている。ジョンは本当に偉大な監督であり、私は自分なりに仕事をしてきた。そしていつか誰かが、私が真剣に突き詰めたものを、その人なりの誠実なやり方で作り変えてくれることを望んでいる」
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