[ストーリー] 証券会社の経営に行き詰まり、精神を病んだジェフリーが、共同経営者と別居中の妻を殺害し、ふたりの娘、3歳のヴィクトリアと1歳のリリーを連れて逃走する。雪山で事故を起こした彼は、娘たちと森を彷徨い、古びた小屋にたどり着く。そこで父親が娘たちを手にかけようとしたとき、暗闇から現れた何者かが彼を消し去る。
5年後、兄のジェフリーと幼い姪たちを探し続けてきたルーカスは、古びた小屋で野生化したヴィクトリアとリリーの姉妹を発見する。奇跡的に生き延びた彼女たちの精神状態に強い関心を抱いたドレイファス博士の協力のもと、ルーカスは恋人のアナベルとともに、博士が用意した屋敷で姉妹と共同生活を営むことにする。
だが、そんなある日、アナベルの周りで不可解な現象が起こり始め、ルーカスが階段から転落して病院に運ばれる。
『MAMA』(13)は、アルゼンチン出身のアンディ・ムスキエティの長編デビュー作になる。ムスキエティが2008年に発表した短編がギレルモ・デル・トロの目にとまり、長編化される運びとなった。ホラーというよりは、デル・トロが好みそうなダーク・ファンタジーに近い。
作品のテーマになっているのは母性だ。古びた小屋に潜んでいた何者かには母性があり、幼い姉妹は生き延びる。一方、救出された姉妹の面倒をみることになるアナベルは、ロックバンドのベーシストで、決して家庭的とはいえない女性だったが、次第に母性に目覚めていく。
ムスキエティ監督の話術や演出には、妙に緻密なところと曖昧なところがある。姉妹と環境に関する表現にはこだわりが感じられる。父親のジェフリーが事件を起こしたときに3歳だったヴィクトリアは、彼女を殺そうとした父親が何者かに襲われたときには、メガネを失っているため、世界がぼやけていた。 |