エリナーは人生に区切りをつけなければ、再び歩み出すことができない。彼女はコナーと痛みを分かち合える状態ではないので、ウェストポートにある実家に戻る。そこには、大学教授で精神科医の父親ジュリアン、フランス人で元ヴァイオリニストの母親メアリー、シングルマザーになって息子と実家に戻ってきた妹ケイティが暮らしている。
「コナーの涙」とは対照的に、エリナーと彼女を取り巻く人々との間には微妙な距離がある。昔からエリナーに憧れてきたケイティは、病院に姉を迎えにきたときから緊張を隠すことができない。ジュリアンは、父親として自然体でエリナーに向き合う以前に、友人のセラピストを家に招き、彼女の感情を逆なでしてしまう。メアリーは、いつもワインを手放さない異邦人で、やはり自然体で娘と接するタイプではない。
傷心のエリナーに最初に安らぎをもたらすのは、彼女が聴講生として通い始めた大学の教授フリードマンだといえる。彼女はエリナーが抱える事情を知らない。そしてお互いに、そこに踏み込んだり、告白したりせずに、自然に心を通わせるようになる。そんな関係が支えになり、エリナーは家族とも打ち解けていく。
コナーは、友人や父親との関係のなかで、近さに依存するのではなく、自立する必要に迫られた。これに対して、区切りを必要としていたエリナーは、家族との関係を通して、両親や妹が、それぞれに問題を抱えながらも、自分たちの居場所を築き、あるいは見出そうとしていることに気づく。そのとき、エリナーのなかにごく自然に、コナーとの幸福な思い出が甦ってくる。そして、居場所を確認するために歩み出す彼女の前に、自立したコナーの背中が見えてくることになる。 |