サムディ / ルドレシュ・マハンサッパ
Samdhi / Rudresh Mahanthappa (2011)


 
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(初出:)

 

 

境界を消し去る“マジックアワー”のダイナミズム

 

 インド系アメリカ人のサックス奏者ルドレシュ・マハンサッパ(Rudresh Mahanthappa)の多面的な活動については、「Rudresh Mahanthappaが切り拓くハイブリッドな世界」に書いたが、その最後のところで少しだけ触れたニューアルバム『Samdhi』がリリースされた。このプロジェクトは、2008年にマハンサッパがグッゲンハイム奨学金を獲得したことがきっかけで始まり、これまでとは編成が異なるバンドが結成され、このアルバムに結実した。

 メンバーと楽器の構成は、Mahanthappa(アルトサックス、ラップトップ)、David Gilmore(エレクトリック・ギター)、Rich Brown(エレクトリック・ベース)、Damion Reid(ドラムス)、”Anand” Anatha Krishnan(ムリダンガム、カンジーラ)。

 今回はマハンサッパが、自身の音楽のルーツとして、よりファンキーでエレクトリックな音楽、グローバー・ワシントンJr.やデヴィッド・サンボーン、ブレッカー・ブラザーズの名前を挙げているところが、意外でもあり新鮮でもある。

 バンドの編成や音楽的ルーツの話からもわかるように、今回はエレクトロニック・ミュージックのフィールドに踏み出し、伝統的なインド音楽やジャズと絡み合わせていく。


◆Jacket◆
 
◆Track listing◆

01.   Parakram #1
02. Killer
03. Richard's Game
04. Playing with Stones
05. Parakram #2
06. Ahhh
07. Meeting of the Skins
08. Still-Gas
09. Rune
10. Breakfastlunchanddinnner
11. For My Lady
12. For All the Ladies

◆Personnel◆

Rudresh Mahanthappa - alto saxophone, laptop; David Gilmore - electric guitar; Rich Brown - electric bass; Damion Reid - drums; Anantha Krishnan - kanjira, mradangam

(ACT Music)
 

 サンスクリットのタイトル“Samdhi”の意味は、Twilight、あるいはMagic Hour。それは、異なるものを出会わせ、その境界を消し去ろうとするアプローチを示唆していると見ることもできる。身体と結びつき、肉声に近いサックスとラップトップ・コンピュータのあわい、エレクトリック・ギターやエレクトリック・ベースとムリダンガムやカンジーラとのあわい、既成の西洋音楽とは一線を画すメロディとリズムのあわいから、独特のエッジとダイナミズムが生み出されている。


(upload:2014/10/31)
 
 
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