エイペックス / ルドレシュ・マハンサッパ&バンキー・グリーン
Apex / Rudresh Mahanthappa & Bunky Green (2010)


 
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(初出:)

 

 

バークリー音楽大学時代のマハンサッパが
大きな影響を受けたバンキー・グリーンと共演

 

 ルドレシュ・マハンサッパ(Rudresh Mahanthappa)は、ニューヨークを拠点に活動するインド系のサックス奏者/コンポーザーだ。彼のアルバムにはコラボレーション作品が多いことは、『キンズメン/Kinsmen』のレビューで書いた。

 その『Kinsmen』とこの『エイペックス/Apex』は、まったくスタイルが違うコラボレーション作品だが、マハンサッパの足跡をふり返ってみたとき、共通する要素が浮かび上がり、比較してみるとなかなか興味深い。

 インドから移民した両親のもと、コロラド州ボルダーで育ったマハンサッパは、北テキサス州立大学でジャズを学びはじめた。そんな頃、彼の兄がある種のジョークで弟にプレゼントしたのが、カドリ・ゴパルナス(Kadri Gopalnath)のアルバム『Saxophone Indian Style』だった。

 ゴパルナスは、南インドの古典音楽カルナーティックに西洋の楽器であるサックスを導入して独自の世界を確立したインドの巨匠で、マハンサッパはそんな音楽からインスピレーションを授かり、やがて東洋と西洋が混じりあうハイブリッドな世界を切り拓くようになる。

 『Kinsmen』は、マハンサッパがそんなゴパルナスと共演した作品であり、自己のひとつの出発点を確認する作品ともいえる。では、『Apex』におけるバンキー・グリーンとの共演にはどんな意味があるのか。


◆Jacket◆
 
◆Track listing◆

01.   Welcome
02. Summit
03. Soft
04. Playing with Stones
05. Lamenting
06. Eastern Echoes
07. Little Girl I'll Miss You
08. Who?
09. Rainer And Theresia
10. Journey

◆Personnel◆

Rudresh Mahanthappa - alto saxophone (1-6, 8-10); Bunky Green - alto saxophone (1-3, 5-10); Jason Moran - piano; Francois Moutin - bass; Jack DeJohnette - drums (1, 2, 9, 10); Damion Reid - drums (3-8)

(Pi Recordings )
 

 マハンサッパは北テキサス州立大学で学んだあと、バークリー音楽大学に進む。シカゴ出身のサックス奏者バンキー・グリーンのことは、バークリーで学んでいるときに、サックスの講師ジョー・ヴィオラから教えられた。グリーンのアルバム『Places We’ve Never Been』を聴いてぶっ飛んだ彼は、デモテープを送り、助言を求めた。それがふたりの関係の始まりだ。

 そして、この『Apex』で、39歳のマハンサッパと75歳のグリーンというまったく世代の異なるアルトサックス奏者がコラボレーションを繰り広げることになった。マハンサッパにとって、ゴパルナスがインド音楽の師であるとすれば、グリーンはジャズの師といえる。このアルバムは、マハンサッパがもうひとつの出発点を確認する作品でもある。


(upload:2014/11/01)
 
 
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