秘密の会場で大金を賭ける顧客たちは、明らかに強運を持つプレイヤーを求めているし、強運や経験を信じてもいる。そして、殺伐としたステージに立つプレイヤーの運命も、他者を犠牲にして、運を奪って生き延びるドラマと見ることもできるだろう。
そんな顧客とプレイヤーの駆け引きや壮絶なサバイバルをリアルに表現するためには、演技以前にまずそれぞれの俳優が漂わせる存在感が重要になるが、この映画のキャスティングは実に興味深い。すでにハリウッドでイメージが定着しているような俳優ではなく、いろいろな意味でアウトサイダー的な資質を備えた俳優が起用されている。
たとえば、ドラマの鍵を握るサム・ライリー、レイ・ウィンストン、ジェイソン・ステイサムは、いずれもアメリカではなくイギリス映画界、そのなかでも主流ではなく周縁から頭角を現してきた俳優だ。ライリーは『コントロール』(07/監督:アントン・コービン)で、内面に不安と狂気を抱えたジョイ・ディヴィジョンのボーカリスト、イアン・カーティスを、昨年の東京国際映画祭で公開された『ブライトン・ロック』(10/監督:ローワン・ジョフィ)では、誰も信じられない病的なギャングを演じ、立て続けに影のある複雑なキャラクターを体現してみせた。
ウィンストンは、かつて『ニル・バイ・マウス』(97/監督:ゲイリー・オールドマン)で妻に暴力を振るうアル中の父親を、『素肌の涙』(98/監督:ティム・ロス)で娘との近親相姦に溺れる父親を演じ、強烈な印象を残した。世界的なスターとなったステイサムも、ガイ・リッチーと出会い、『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』(98)に出演していなければ、別の道を歩んでいたかもしれない。さらに、スウェーデン出身のアレックス・スカーシュゴードなども、このイギリス勢に加えてもよいだろう。
一方、アメリカ勢でまず印象に残るのが、ミッキー・ロークとカーティス・“50セント”・ジャクソンだ。実人生を反映させた主演作『レスラー』(08/監督:ダーレン・アロノフスキー)で復活を遂げたロークと、自ら主演した半自伝的作品『ゲット・リッチ・オア・ダイ・トライン』(05/監督:ジム・シェリダン)で俳優デビューを飾った50セント。それぞれに過去を背負うふたりが絡み合っていくところも見所のひとつになっている。
それから『レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで』(08/監督:サム・メンデス)で精神を病んだ青年を、『ランナウェイズ』(10/監督:フローリア・シジスモンディ)でクセ者プロデューサーを好演したマイケル・シャノン、インディペンデント映画の父ジョン・カサヴェテスの作品で活躍したベン・ギャザラ、人気挌闘家で『ゴジラ FINAL WARS』(04/監督:北村龍平)や『パブリック・エネミーズ』(09/マイケル・マン)で俳優としても活躍するドン・フライも、異端的な空気を漂わせている。
『ロシアン・ルーレット』では、アウトサイダーたちの個性が引き出され、火花を散らしていく。だから既成のアメリカ映画とは異質なエッジやリアリティを感じるのだ。 |