[Introduction] インド・マラヤーラム語映画で活躍し、『トゥー・ガールズ(英題)/2 Penkuttikal』(16)、『リトル・ゴッド(英題)/Kunju Daivam』(18)、『キロメーターズ・アンド・キロメーターズ(原題)』(20)といった作品を手がけてきたジヨー・ベービ監督の長編第4作。名前を持たない「妻」と「夫」の物語。古くからのインドの風習に従い、お見合いで結婚した若い女性が見た、堅固な家父長制と強烈なミソジニー(女性嫌悪)。
本作は、ひと月に満たない期間で撮影された低予算映画で、センシティブな宗教問題に触れた一部のシーンの過激さから大手配信会社に拒絶されながらも、口コミの力でオンライン配信映画市場に旋風を巻き起こした異色作。(プレス参照)
[Story] インド南西端のケーララ州。冒頭で主人公の男女のお見合いと結婚が手短に描かれ、ふたりの新婚生活が始まる。ちなみに本作では、彼らに名前はなく、「妻」と「夫」の物語が展開していく。夫は由緒ある家柄の出で、伝統的な邸宅に両親とともに暮らしている。父親の仕事の関係で中東での生活が長かった妻は、そんな家族の一員となり、温和な姑に導かれて、家事のあれこれを学んでいく。
だが、姑が妊娠中の実の娘の面倒を見るために家を離れると、新妻に炊事、洗濯、掃除をひとりでこなす試練が降りかかる。舅は頑固な伝統主義者で、家電を使うのを好まないため、彼の洗濯物は手洗いし、米は釜で炊くしかない。朝、庭先でくつろぐ舅に、歯ブラシを持ってくるよう指図されるのにはさすがに戸惑う。
夫は、残り物があっても毎食できたての料理を望み、自分はヨガや瞑想で余暇を過ごす。妻が流し台の水漏れを訴えても、夫が何もしようとしないため、汚水の処理まですることになる。夜の営みの最中も、妻は手にこびりついた汚水の悪臭に悩まされているが、夫は自分の欲望を満たすことしか頭にない。妻は生理中の数日間だけは重荷から解放されるが、穢れた存在とみなされることを喜べるはずもない。そんな生活のなかで、妻は忍耐の限界まで追い詰められていく。 |