ローチの『ジミー、野を駆ける伝説』は、この映画を作る前の彼の活動と無関係ではない。イギリスではローチの呼びかけによって、2013年11月に新しい左翼政党“Left Unity”が誕生した。また、その呼びかけに合わせて、ローチが監督したドキュメンタリー『The Spirit of '45』(13)も公開された。これは、第二次大戦後の45年に誕生した労働党政権による福祉国家建設の時代とその後のサッチャリズムによる社会の変貌を回顧する作品だった。
ローチはそんな世界を、『The Spirit of '45』における戦後の労働者たちの連帯や現代における“Left Unity”と重ねている。筆者は、この『パレードへようこそ』にもそんな視点が当てはまるのではないかと思う。ゲイとレズビアンのグループが、炭鉱の町の集会所で住人たちと対面したときには、当然のことながらよそよそしい空気が漂っている。しかし、ゲイのグループのひとりが、ロンドン仕込みのダンスによって住人たちを魅了することによって、空気が一変し、交流が始まる。そして後半では、炭鉱の女性たちからトラディショナル・ソングの合唱が始まり、他者を包み込んでいく。