[ストーリー] ロンドン市ケニントン地区の民生係、ジョン・メイ。ひとりきりで亡くなった人を弔うのが彼の仕事。事務的に処理することもできるこの仕事を、ジョン・メイは誠意をもってこなしている。しかし、人員整理で解雇の憂き目にあい、ジョン・メイの向かいの家に住んでいたビリー・ストークが最後の案件となる。
この仕事をしているにもかかわらず、目の前に住みながら言葉も交わしたことのないビリー。ジョン・メイはビリーの人生を紐解くために、これまで以上に熱意をもって仕事に取り組む。そして、故人を知る人々を訪ね、イギリス中を旅し、出会うはずのなかった人々と関わっていくことで、ジョン・メイ自身も新たな人生を歩み始める――。[プレスより]
プロデューサーとして『パルーカヴィル』や『フル・モンティ』といった作品を手がけてきたウベルト・パゾリーニにとって、『おみおくりの作法』は、2008年の『マチャン(原題)/Machan』につづく監督第二作になる。
パゾリーニの監督作には共通点がある。スリランカを主な舞台とする『マチャン(原題)』では、港湾都市コロンボのスラムでどん底の生活を送る男たちが、なんとかして豊かなヨーロッパで働くために一計を案じる。ドイツのバイエルンで開催されるハンドボールのトーナメントのことを知った彼らは、それがどんなスポーツかも知らないのに、偽のチームを作って招待を受け、ドイツに向かって飛び立つ。
『おみおくりの作法』では、主人公ジョン・メイの仕事を通して、ほとんど誰にも知られることなくこの世から消えていく死者の世界に触れることになる。
パゾリーニは他者をテーマにし、他者を通してこの世界を見直そうとする。その他者は弱者に置き換えられる。特に『おみおくりの作法』では、高齢者でも障害者でも低所得者でもなく、もの言えぬ死者が弱者の代表と位置づけられる。最も弱い者をどう扱っているかで、私たちがどんな世界を生きているのかがわかる。ジョン・メイの後任は、官僚制に埋没した人物で、死者に敬意を払うこともなく、機械的に処理していく。上司はその効率を評価している。
では、これまで死者に敬意を払ってきたジョン・メイは、ビリー・ストークを弔うという最後の仕事を通してなにを見出すのか。そこにはふたつのポイントがある。 |