[Introduction] 作家や俳優としても活動するサミュエル・ベンシェトリ監督の5作目の長編映画。彼が作家として最初に成功を収めたのが、労働者階級や移民が多く暮らすパリ郊外の団地(バンリュー)で過ごした少年時代にインスパイアされて書いた「Chroniques de l’Asphalte」という短編集。05年にそれを発表したあと、07年と10年に同じタイトルで第二弾、第三弾を発表している。郊外の寂れた団地を舞台にした本作の物語は、その短編集に収められた作品を土台に、新たなエピソードを加えてひとつの世界にまとめられている。協調性に欠けるサエない中年男と陰のある夜勤の看護師、母親が留守がちな母子家庭のティーンエイジャーと団地に越してきた落ち目の女優、息子が服役しているアルジェリア系移民の母親と誤って宇宙から団地に帰還してしまったNASAの宇宙飛行士。3組の世代も背景も異なる男女の出会いと触れ合いを、オムニバスともいえる構成で描く。イザベル・ユペールが落ち目の女優を、ヴァレリア・ブルーニ・テデスキが夜勤の看護師を、マイケル・ピットがアメリカ人の宇宙飛行士を演じている。