『グアヴァ園は大騒ぎ』は、インド出身の女性作家キラン・デサイの長編デビュー作だ。物語の舞台になるのは、インドのなかで、国内最高気温を何度も更新した前歴があるという田舎町シャーコート。
ひどい旱魃が続いた後のモンスーンとともに生まれた赤ん坊が、「幸運」を意味するサンパトと名付けられる。だがそれから20年後、サンパトは、無気力な人間になっていた。父親が見つけてくれた郵便局の仕事もまったくやる気がなく、局長の娘の結婚式で女装して尻を出して、クビになってしまう。彼にとって毎日の生活は牢獄だった。
そんなある日、サンパトは家を抜け出し、国有林のなかにある一本の古いグアヴァの木に登り、初めて安らかで満ち足りた気持ちになる。ところが、家族や町の連中が木の下に押し寄せ、彼はいつしか聖人に祭り上げられていく。
サンパトの父親は一儲けを企み、信者のなかには贋聖人暴露局のスパイが紛れ込み、木に居ついた猿たちは酒の味を覚え、軍隊まで出動する騒ぎに発展していく。
これは、インド生まれのデサイが、田舎町の日常を、ユニークなキャラクターと自由奔放なイマジネーション、饒舌な文体で描き出した小説といえるが、インドに対する独自の視点も見逃せない。
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