■■迷い、悩んだ、下積み時代■■
1968年イギリス生まれのナオミ・ワッツは、母親がアマチュア演劇に参加していたこともあり、子供の頃から演技に興味を持ち、女優を目指すようになった。だが、そんな彼女には茨の道が待ち受けていた。
14歳の時に家族とともにオーストラリアのシドニーに移住したワッツは、演劇学校に通い、本格的に演技を学びだす。その頃に、オーディションで出会ったのが、ニコール・キッドマンだった。ふたりは親友になるが、その後はまったく対照的な道を歩むことになる。
オーストラリア映画界で脚光を浴びたキッドマンは、ハリウッドに進出して成功を収めていく。ワッツは、スクリーンデビューはしたものの、才能に迷いを覚え、日本でモデル業に挑戦して挫折し、シドニーに戻ってファッション雑誌の編集アシスタントになる。
しかし女優の夢が諦めきれず、茨の道を歩みだす。オーストラリアとアメリカのショービジネスの世界を往復し、オーディションに通い、歴史もの、SF、インディペンデント映画、テレビシリーズなどで様々な役をこなし、辛抱強く機会が訪れるのを待ち続けるのだ。
■■人生を変えた「1本の映画」■■
そんなワッツにとって転機となったのが、デヴィッド・リンチの『マルホランド・ドライブ』(01)だ。紆余曲折を経て完成した映画は、ある意味でワッツのキャリアを象徴している。
ワッツには、レギュラー出演していたテレビシリーズを打ち切られることが一度ならずあった。この作品も当初、ABCのテレビシリーズとして企画されたが、パイロット版を観たABC側がその過激さに恐れをなし、企画を中止してしまった。しかしリンチは諦めず、プロデューサーと製作費を得て、新たな構想のもとに追加シーンを撮影し、再編集して、劇場用映画として甦らせた。 |