[ストーリー] 小学校の教師ケイトとチャーリーは、酒が好きで結ばれたような夫婦だ。ケイトは仕事の前にも飲んでいたが、飲酒が原因の失態を繰り返して危機感を抱き、同僚デイヴの勧めもあって断酒会に入ることを決意する。そして、断酒会で立ち直ったデイヴや断酒会の世話役ジェニーに励まされ、生活をあらためていく。だが、なりゆきでついた嘘が、彼女を追いつめてしまうことになる。
『スマッシュド〜ケイトのアルコールライフ〜』(12)は、78年生まれの新鋭ジェームズ・ポンソルトの長編第2作だ。アルコール依存症から立ち直ろうとするヒロインを描いた物語というと暗い作品を想像するかもしれないが、この映画は依存症の現実に肉薄し、生々しく描き出そうとするわけではない。
ポンソルト監督はストーリーに頼らず、等身大のヒロインに寄り添い、ケイトの日常と心の揺れを描き出していく。店で飲んでいたケイトは、酔った女性の頼みを断れずに彼女を車で送るが、車中で勧められるままにクスリをやってしまう。そして騒いだあげく、翌朝、人気のない場所で目覚める。夜中に酒を切らし、自転車で店に買いに行くが、彼女の様子を見た知り合いの店主は、売ろうとしない。彼女は堪えきれずに店に放尿にしたうえ、酒を盗んでしまう。そして翌朝、知らない場所で目覚める。そんな場面では、記憶が曖昧で、自己嫌悪に陥る気持ちが伝わってくる。
さらに、脚本にもひねりが効いている。ケイトは授業中に気分が悪くなり、吐いてしまうが、生徒から妊娠したのかと尋ねられて、なりゆきで肯定してしまう。ところがその話は、生徒から父兄や教師へと伝わり、女性校長が妊娠を祝うサプライズ・パーティまで開いてしまう。ケイトは戸惑っているうちに、依存症とは違う泥沼にもはまっていく。 |