林檎とポラロイド
Mila / Apples


2020年/ギリシャ=ポーランド=スロベニア/ギリシャ語/カラー/90分/スタンダード/5.1ch
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(初出:「ニューズウィーク日本版」映画の境界線2022年3月10日更新)

 

 

記憶を失う奇病が蔓延する世界、回復プログラムと孤独
記憶とアイデンティティの関係を問い直す寓話的コメディ

 

[Introduction] 記憶喪失を引き起こす奇病が蔓延する世界を舞台に、突然記憶を失い、治療のための回復プログラム”新しい自分”に参加した男の変化を通して、記憶とアイデンティティの関係を問い直す。リチャード・リンクレイターやヨルゴス・ランティモスの助監督を務めていたギリシャの新鋭クリストス・ニクが、オリジナル脚本で作り上げた長編デビュー作。彼が映画監督を志すきっかけとなった作品は『トゥルーマン・ショー』とのこと。主人公の男を演じているのは、ヨルゴス・ランティモスの『アルプス』(11)に出演していたアリス・セルヴェタリス。プログラム・マネージャーの女性を演じているのは、ランティモスの『籠の中の乙女』(09)に出演していたアナ・カレジドゥ。

 ケイト・ブランシェットがクリストス・ニク監督の才能に惚れ込み、エグゼクティブ・プロデューサーとして参加することを熱望し、新たにクレジットされた。次回作はケイト・ブランシェットプロデュース、キャリー・マリガン主演で製作が決定。(プレス参照)

[Story] 「お名前は?」「覚えていません」──。バスの中で目覚めた男は、記憶を失っていた。覚えているのはリンゴが好きなことだけ。治療のための回復プログラム“新しい自分”に男は参加することに。毎日リンゴを食べ、送られてくるカセットテープに吹き込まれた様々なミッションをこなしていく。自転車に乗る、ホラー映画を見る、バーで女を誘う… ──そして新たな経験をポラロイドに記録する。 ある日、男は、同じプログラムに参加する女と出会う。言葉を交わし、デートを重ね、仲良くなっていく。毎日のミッションをこなし「新しい日常」にも慣れてきた頃、買い物中に住まいを尋ねられた男は、以前住んでいた番地をふと口にする…。記憶はどこにいったのか? 新しい思い出を作るためのミッションが、男の過去を徐々に紐解いていく。

 ニューズウィーク日本版の筆者コラム「映画の境界線」で本作を取り上げています。その記事をお読みになりたい方は以下のリンクからどうぞ。

記憶喪失を引き起こす奇病が蔓延する世界|『林檎とポラロイド』


◆スタッフ◆
 
監督/脚本   クリストス・ニク
Christos Nikou
脚本 スラヴロス・ラプティス
Stavros Raptis
撮影 バルトシュ・シュフィニャルスキ
Bartosz Swiniarski
編集 ヨルゴス・ザフィリス
Giorgos Zafeiris
音楽 ザ・ボーイ
The Boy(Alexander Voulgaris)
 
◆キャスト◆
 
  アリス・セルヴェタリス
Aris Servetalis
ソフィア・ゲオルゴヴァシリ
Sofia Georgovassili
プログラム・マネージャー アナ・カレジドゥ
Anna Kalaitzidou
プログラム・マネージャー アリギリス・バキルジス
Argyris Bakirtzis
高齢の患者 コスタス・ラスコス
Kostas Laskos
-
(配給:ビターズ・エンド)
 

[追加のコメント]

● クリストス・ニク監督が、フェルナンド・メイレレス監督の『ブラインドネス』として映画化されたジョゼ・サラマーゴの『白い闇』にもインスパイアされて本作を作ったことに注目してみると、この小説との接点が見えてきます。

 

(upload:2022/02/27、update:03/10)
 
 
《関連リンク》
ヨルゴス・ランティモス 『ロブスター』 レビュー ■
ヨルゴス・ランティモス 『アルプス(原題)/Alps』 レビュー ■
ヨルゴス・ランティモス 『籠の中の乙女』 レビュー ■
ピーター・ウィアー 『トゥルーマン・ショー』 レビュー ■
フェルナンド・メイレレス 『ブラインドネス』 レビュー ■

 
 
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