[Introduction] 記憶喪失を引き起こす奇病が蔓延する世界を舞台に、突然記憶を失い、治療のための回復プログラム”新しい自分”に参加した男の変化を通して、記憶とアイデンティティの関係を問い直す。リチャード・リンクレイターやヨルゴス・ランティモスの助監督を務めていたギリシャの新鋭クリストス・ニクが、オリジナル脚本で作り上げた長編デビュー作。彼が映画監督を志すきっかけとなった作品は『トゥルーマン・ショー』とのこと。主人公の男を演じているのは、ヨルゴス・ランティモスの『アルプス』(11)に出演していたアリス・セルヴェタリス。プログラム・マネージャーの女性を演じているのは、ランティモスの『籠の中の乙女』(09)に出演していたアナ・カレジドゥ。
ケイト・ブランシェットがクリストス・ニク監督の才能に惚れ込み、エグゼクティブ・プロデューサーとして参加することを熱望し、新たにクレジットされた。次回作はケイト・ブランシェットプロデュース、キャリー・マリガン主演で製作が決定。(プレス参照)
[Story] 「お名前は?」「覚えていません」──。バスの中で目覚めた男は、記憶を失っていた。覚えているのはリンゴが好きなことだけ。治療のための回復プログラム“新しい自分”に男は参加することに。毎日リンゴを食べ、送られてくるカセットテープに吹き込まれた様々なミッションをこなしていく。自転車に乗る、ホラー映画を見る、バーで女を誘う…
──そして新たな経験をポラロイドに記録する。
ある日、男は、同じプログラムに参加する女と出会う。言葉を交わし、デートを重ね、仲良くなっていく。毎日のミッションをこなし「新しい日常」にも慣れてきた頃、買い物中に住まいを尋ねられた男は、以前住んでいた番地をふと口にする…。記憶はどこにいったのか? 新しい思い出を作るためのミッションが、男の過去を徐々に紐解いていく。
ニューズウィーク日本版の筆者コラム「映画の境界線」で本作を取り上げています。その記事をお読みになりたい方は以下のリンクからどうぞ。
● 記憶喪失を引き起こす奇病が蔓延する世界|『林檎とポラロイド』 |