[ストーリー] 妻に捨てられたばかりのデヴィッドは、前時代的な避暑地のようなホテルへ連行される。その時代、独り身でいることが禁じられていた。彼には淡々とルールが告げられる。ホテルに滞在できるのは45日。その期限内にパートナーを見つけなければ“希望する”動物に変身させられる。もしくは、逃亡して森に暮らす“独身者”たちを麻酔銃で撃ち、一人についき期限が一日延びる。
デヴィッドは森へ逃亡し、今度は独身者たちに捕まり、行動を共にすることに。だが“独身者たちのリーダー”が支配する森にも同じくらいのルールがあった。恋愛禁止、スキンシップ禁止、ダンスも一人で踊ること。そうして今度はホテルの者たちに狙われる日々を過ごすことになるが、そこで初めて彼は“近視の女”に光を見出す。[『ロブスター』プレス参照]
『籠の中の乙女』(09)、『アルプス(原題)』(11)で注目されてきたギリシャの異才ヨルゴス・ランティモス監督の新作、初の英語作品です。
ランティモスは現在イギリス在住で、撮影は全編アイルランドで行われていますが、共同脚本のエフティミス・フィリップ、撮影監督のディミオス・バカタキス、編集のヨルゴス・マブロプサリディスなど、ギリシャ時代のスタッフが顔を揃え、揺るぎないランティモス・ワールドを作り上げています。ランティモス作品の常連女優アンゲリキ・パプーリァも健在です。
筆者は『アルプス(原題)』のレビューに、「組織の規律と個人の欲望の狭間で、現実と擬似家族の境界が揺らいでいく」というタイトルをつけましたが、そうしたテーマを、さらに緻密な構成で深く掘り下げた作品といえます。
[以下、本作のレビューになります]
ギリシャの異才ヨルゴス・ランティモスの作品を観ると、最初はその設定に面食らう。『籠の中の乙女』(09)に登場する一家は、外の世界で子供たちが悪影響を受けないように、両親が彼らを家から出さずに育てている。『アルプス(原題)』(11)に登場するグループは、家族を亡くした遺族の哀しみを癒すために、メンバーが故人に成りきるサービスを提供している。
そして、豪華キャストが顔を揃えた初の英語作品『ロブスター』の世界では、独り身でいることが禁じられ、ホテルのような施設での婚活を強要され、45日以内に伴侶を見つけなければ動物に変えられてしまう。 |