[ストーリー] 謎の侵略者“ギタイ”からの激しい攻撃で、滅亡寸前に追い込まれた世界。戦闘スキルゼロのケイジ少佐は最前線に送り込まれ、開戦5分で命を落とす。だが次の瞬間、彼は出撃前日に戻っていた。その時から同じ日を無限に繰り返すケイジ。やがて彼は最強の女性兵士リタと出逢う。ケイジのループ能力が敵を倒す鍵になると確信したリタは、彼を強靭な“兵器”に変えるべく、徹底的に鍛え上げる。“戦う・死ぬ・目覚める”のループを繰り返すことで別人のように成長したケイジは、世界を、そしてかけがえのない存在となったリタを守りきることができるのか――? [プレスより]
レビューのテキストは準備中です。とりあえず簡単な感想を。
■トム・クルーズが情けない男のキャラクターで登場するところに意外性があります。エミリー・ブラントは好きな女優のひとりですが、トムが演じるケイジとは対照的な勇ましいキャラクターが似合っていました。偶然能力を身につけてしまったケイジとその能力の重要性を熟知するリタが、出会いを繰り返しますが、リタの方にはその記憶がありません。そんなズレから生まれるスリルやロマンス、ユーモアが見所になります。ここらへんの緻密な組み立ては、クリストファー・マッカリー(『パブリック・アクセス』、『ユージュアル・サスペクツ』)の功績でしょうか。
■原作は、2004年に出版された桜坂洋の『All You Need Is Kill』。キャラクターがリセット可能な死を繰り返しながら成長を遂げ、ループから脱出しようとするというセカイ系のアプローチというのはまだ有効なのでしょうか。個人的には、ダーレン・アロノフスキーの『ノア 約束の舟』やウォーリー・フィスターの『トランセンデンス』のように、“世界リスク社会論”と結びつけられそうなアプローチに刺激を覚えます。
■ちなみに、ウルリッヒ・ベックの『世界リスク社会論――テロ、戦争、自然破壊』の訳者解説には、リスク社会論が以下のようにわかりやすくまとめられています。「ベックによれば、リスク社会とは、産業社会が環境問題、原発事故、遺伝子工学などに見られるように新たな時代、別の段階に入り、それまでとは質的にまったく異なった性格を持つようになった社会のことである。異なった性格とは、「困窮は階級的であるが、スモッグは民主的である」という言葉に象徴されるように、環境汚染や原発事故といったリスクが、階級とは基本的には無関係に人々にふりかかり、逆説的にある種の平等性、普遍性を持っていること、そしてチェルノブイリ原発事故に端的に示されているように、リスクの持つ普遍性が、国境を超え、世界的規模での共同性、いわゆる世界社会を生み出していることが挙げられる。その意味で、今までの一国社会、国民国家、また国内内部での階級的不平等を主要な特徴としていた産業社会から決別し、新たな段階としてリスク社会に入ったというわけである。(後略)」 |