[ストーリー] 1939年、英国。世界一の数学者を自負するアラン・チューリングは、ドイツ軍の暗号エニグマを解読するという政府の極秘任務に就く。チェスの英国チャンピオンなど各分野の精鋭によるチームが結成されるが、傲慢かつ不器用なチューリングは彼らとの協力を拒み、一人で電子操作の解読マシンを作り始める。
そんな中、新たにチームに加わったクロスワードパズルの天才ジョーンがチューリングの理解者となり、やがてその目的は人の命を救うことに変わっていく。いつしか一丸となったチームは予想もしなかったきっかけでエニグマを解くが、解読したことを敵に知られれば設定は変えられてしまう。MI6と手を組んで、チューリングはさらに危険な秘密の作戦に身を投じるのだが――。[プレスより]
モルテン・ティルドゥム監督の『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』では、第二次大戦中に解読不可能といわれたドイツ軍の暗号エニグマに挑み、戦争終結に重要な役割を果たしたイギリスの天才数学者アラン・チューリングの数奇な運命が描かれる。極秘任務のために集められた各分野の精鋭たちと協調性を欠くこの孤高の天才との確執、チューリングが作り上げていくマシン“ボンブ”の斬新なイメージ、解読成功後の冷酷な情報戦など、エニグマとの戦いはスリリングなドラマを生み出していく。しかし、この映画の見所はそれだけではない。
チューリングは今では「コンピュータの父」や「情報時代の先駆者」として評価されているが、暗号解読に関する資料が徐々に公開されるようになったのは戦後30年を過ぎた頃からのことで、イギリス政府が戦後のチューリングに対する非人道的な扱いを謝罪したのは2009年のことだった。この映画の脚本は、そんな事情を踏まえた構成になっている。
物語は戦後の1951年のマンチェスターから始まる。チューリングの自宅が何者かに荒らされるが、地元警察の刑事はチューリングの態度を不審に思い、彼に対する取り調べを行なう。そこでチューリングは自身の秘密を語り出す。ここでポイントになるのは、語り手とその告白に対して判断を下す立場にある聞き手との関係だ。それは映画のタイトルと深く結びついている。
チューリングは、人間と機械の違いを見分けるために自ら考案したテストを“イミテーション・ゲーム”と呼んでいた。そのテストは、フィリップ・K・ディックの小説『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』とそれを映画化した『ブレードランナー』で、人間とアンドロイドを見分けるために行なわれるフォークト・カンプフ法としばしば対比される。 |