ブリー・ラーソン 主演の『ショート・ターム』 を監督したデスティン・ダニエル・クレットン と音楽を手がけたジョエル・P・ウェスト は、この作品の成功によって飛躍を遂げようとしている。
クレットンは現在、再びラーソンと組み、ナオミ・ワッツやウディ・ハレルソンが共演する次回作『The Glass Castle』を撮影している。ウェストは、『About Alex』、『愛しのグランマ』、『Safelight』、『Band of Robbers』、『Youth in Oregon』、『Grass Stains』といった作品の音楽を次々と手がけ、クレットンの次回作でもコンビを組む。
しかし、このコンビの出発点になっているのは、『ショート・ターム』 ではなく、クレットンがその前に監督したデビュー作『ヒップスター』だ。この映画では、クレットンの演出とウェストの音楽がより深く絡み合う。主人公のブルック・ハイドは、サンディエゴを拠点に活動するシンガーソングライターという設定で、ウェストはブルックを演じるドミニク・ボガートとCANINESというバンドを結成し、サントラとは別にバンドのアルバムまでリリースした。
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一方、クレットンは音楽とも絡めながらブルックの複雑な心理を描き出していく。ブルックは、リリースしたデビューアルバムが評価されているにもかかわらず、周囲の人間に攻撃的な態度をとり、自分を受け入れることができずに虚無感にとらわれている。やがてそんな状態が、母親の死や父親との確執に起因していることがわかってくる。
ブルックの葛藤が印象深く感じられるのは、彼が作った音楽と死者を弔うことが深く結びついているからだ。彼のアルバムには喪失の痛みが刻み込まれ、しかも彼の心は喪に服したまま日常に回帰していない。ところが、そんなブルックの前に、父親と3人の姉が母親の遺灰を撒くために現れたことから、彼は人生の岐路に立たされることになる。
『ショート・ターム』 でラーソンが演じたケアテイカーも、施設にやって来る少年少女も、家族との関係で深く傷つきながら、その痛みを誰とも共有できずに苦しんでいた。クレットンの次回作も機能不全家族が題材になっている。この監督は一貫したテーマを追求し、『ヒップスター』にはその原点を見ることができる。