ある画家の数奇な運命
Werk ohne Autor / Never Look Away


2018年/ドイツ/ドイツ語/カラー/189分/アメリカンヴィスタ/5.1ch
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(初出:「ニューズウィーク日本版」映画の境界線2020年10月1日更新)

 

 

現代美術の巨匠リヒターの人生と
ドイツ戦後史に新たな光をあてる

 

[Introduction] 長編映画監督デビュー作『善き人のためのソナタ』でアカデミー賞®外国語映画賞を受賞したフロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク監督の、祖国ドイツの歴史の闇と、芸術の光に迫る最新作。第75回ヴェネツィア国際映画祭コンペティション部門で高評価を獲得し、第91回アカデミー賞®外国語映画賞にノミネートされた。主人公・クルトのモデルは、オークションに出品すれば数十億円の価格がつくことで知られる、現代美術界の巨匠、ゲルハルト・リヒター。監督が映画化を申し込んだところ、1か月にわたっての取材が許された。ただし、映画化の条件は、人物の名前は変えて、何が事実か事実でないかは、互いに絶対に明かさないこと。そんなミステリアスな契約のもと、観る者のイマジネーションをさらに膨らませる作品が誕生した。(プレス参照)

[Story] ナチ政権下のドイツ。少年クルトは叔母の影響から、芸術に親しむ日々を送っていた。ところが、精神のバランスを崩した叔母は強制入院の果て、安楽死政策によって命を奪われる。終戦後、クルトは東ドイツの美術学校に進学し、そこで出会ったエリーと恋におちる。元ナチ高官の彼女の父親こそが叔母を死へと追い込んだ張本人なのだが、誰もその残酷な運命に気づかぬまま二人は結婚する。やがて、東のアート界に疑問を抱いたクルトは、ベルリンの壁が築かれる直前に、エリーと西ドイツへと逃亡し、創作に没頭する。美術学校の教授から作品を全否定され、もがき苦しみながらも、魂に刻む叔母の言葉「真実はすべて美しい」を信じ続けるクルトだったが―。

 ニューズウィーク日本版の筆者コラム「映画の境界線」で本作を取り上げています。その記事をお読みになりたい方は以下のリンクからどうぞ。

現代美術の巨匠リヒターの人生とドイツ戦後史に新たな光をあてる|『ある画家の数奇な運命』


◆スタッフ◆
 
監督/脚本/製作   フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク
Florian Henckel von Donnersmarck
撮影 キャレブ・デシャネル
Caleb Deschanel
編集 パトリシア・ロンメル
Patricia Rommel
音楽 マックス・リヒター
Max Richter
 
◆キャスト◆
 
クルト・バーナート   トム・シリング
Tom Schilling
カール・ゼーバント セバスチャン・コッホ
Sebastian Koch
エリー・ゼーバント パウラ・ベーア
Paula Beer
エリザベト・マイ ザスキア・ローゼンダール
Saskia Rosendahl
アントニウス・ファン・フェルテン オリヴァー・マスッチ
Oliver Masucci
-
(配給:キノフィルムズ/木下グループ)
 

 

《参照文献》
『ゲルハルト・リヒター 写真論/絵画論』●
清水穣訳(淡交社、2005年)

(upload:2021/10/06)
 
 
《関連リンク》
ドミニク・グラフ
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